医療機関による救急搬送患者の受け入れ拒否問題の改善に向け、総務省消防庁は五日開かれた有識者検討会で、患者の容体に応じた搬送先の医療機関リストなどを盛り込んだ「搬送・受け入れ基準」の策定を都道府県に義務付ける方針を示し、了承された。
九日の消防審議会答申を経て、消防法改正案に盛り込み、今国会への提出を目指す。改正法が成立すれば年内にも施行、二〇〇九年度中に各都道府県に基準策定を促す。
搬送先リストをあらかじめ定めておくことで、救急隊員が円滑に搬送先を選定できるほか、救命救急センターなど一部医療機関への急患の集中を分散させ、「たらい回し」の発生を抑制する。また遅延傾向が続く搬送時間の短縮にもつなげる。
搬送先リストには、例えば(1)心肺停止状態なら救命救急センター(2)重症の脳疾患はA病院(3)軽症の心疾患はB病院—など、症状の種類と程度に応じた具体的な医療機関名を載せる。
搬送・受け入れ基準では、救急隊員が現場で患者の症状を確認し、リストの中から搬送先を選ぶ際のルールを決める。搬送先が決まらない場合に備え、最終的な受け入れ先を当番制で確保しておくなどの方策も定める。
市町村の消防本部は基準に従って患者を搬送し、医療機関側は基準を尊重して患者を受け入れるよう求める。今後、こうした基準のひな型となる指針を消防庁がつくり、自治体に示す。
基準策定は都道府県ごとに設置される医師や消防関係者、有識者らで構成する協議会が担当。消防庁は、救急救命士の搬送中の処置に関する事後検証を主に行う各都道府県の「メディカルコントロール協議会」などの活用を想定している。