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2009年02月03日(火) 14時06分

セブン&アイ、百貨店経営の懸念払拭なるか=北浜流一郎サーチナ

 我が家の近くには東急百貨店とイトーヨーカ堂があります。東急百貨店は駅と一体となっているため、しょっ中出かけて行くのですが、イトーヨーカ堂は駅からやや離れていることから、土日や祝祭日だけ、それも月に1、2回がせいぜいです。それでも土日や祝祭日なのだから、かなりお客がいてもおかしくないと思うのですが、実際は売り場が日々寂しくなっていく感じです。

 私は一消費者として行くのであり、営業時間中ずっと来客状況を監視しているわけではないので、私が行っていない時間、大量のお客が押し寄せていることもあり得ます。しかし私が行くのはウォーキングの途中で昼頃になるのに、そんな時間でも売り場が寂しいのです。

 イトーヨーカ堂の良さは、妻にいわせると製品の品質が良いとのこと。低価格の衣料品でも縫製がしっかりしていて、それはあらゆる商品に及ぶそうなのですが、それでも来店客が減少しているようなのはどういうことなのか。消費不振と言ってしまえばそれまでですが、一方でユニクロのようにお客が明らかに増えている店もあります。

 このような状況下で、イトーヨーカ堂を傘下に持つセブン&アイ・ホールディングス <3382> は、そごう心斎橋店をJフロントリテイリング <3086> に売却する方向で交渉しているとのこと。高額商品や衣料品の販売不振により、百貨店の経営環境は厳しく、売却話が持ち上がっているそごう心斎橋本店も、店舗面積約4万平方メートルの主力店ながら、売上不振が続いていました。

 それを売却するというのです。セブン&アイは、そごうと西武百貨店で構成するミレニアムリテイリングの下に、全国に28店舗を持ち、大手の中でも店舗数が多く、かねてから統廃合の必要性が指摘されていました。今回のそごう心斎橋本店売却話は、その具体化になるのですが、そもそもイトーヨーカ堂グループによるそごうと西武百貨店の買収そのものが正しい選択だったかです。

 スーパー業界最大手にとって百貨店経営は憧れなのかもしれません。かつてダイエーも百貨店の経営を目指し、失敗しました。イトーヨーカ堂グループもそごうと西武という百貨店を傘下に持つようになり、かねての念願を果たしたことにはなるのでしょうが、スーパーと百貨店は似て非なるものです。

 スーパーは日用品の販売が主であるため、経営も地味で堅実であることが求められます。そしてイトーヨーカ堂は実際のその究極を実現、伸びてきました。ところが百貨店には、華やかさが求められます。スーパー経営で伸びてきた企業にはこの点が不得手であり、非常に越えにくい垣根になってしまいます。

 百貨店も当然経営効率を追求はしなければなりません。しかし一方で「必要な無駄」が必要であり、イトーヨーカ堂のようにぎりぎりまで無駄を切り詰めた経営に徹してきた企業とは、まったく波長が合わないところがあります。この点をセブン&アイ・ホールディングスの経営陣は分かっているのかどうか。疑問ありです。

 いまは応急措置として傘下にしている百貨店の一部売却もやむを得ないでしょうが、スーパー経営と百貨店経営。この本質的な違いを認識してもらわないことには、さらに売却店を増やさねばならなくなります。イトーヨーカ堂本体の集客力回復とともにぜひ実行してもらいたいもの。それがそごう心斎橋店を売却するという単純なリストラ策より、株主を安心させるでしょう。(執筆者:北浜流一郎 株式アドバイ
ザー)

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