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2009年02月03日(火) 19時51分

カルザイ氏、再選に暗雲 距離置く米国、支持低迷中国新聞

 今年八月のアフガニスタン大統領選で、出馬表明している現職のカルザイ大統領再選に暗雲が立ち込めている。カルザイ氏は、ブッシュ前米政権と緊密な関係を保っていたが、泥沼化する旧政権タリバン掃討作戦を背景に、オバマ米新政権は距離を置き、国民や政権内部からも見放され始めた。一転してロシアに接近し、支持拡大を狙うが、見通しは暗い。

 ▽カルザイ離れ

 「戦闘機を売ってもらうよう何度も米国に頼んだが、無視された」。一月二十五日、アフガン国軍の士官学校卒業式。カルザイ大統領は強い口調で米国批判を繰り返した。別の会合でも米軍主体の多国籍軍による民間人誤爆が頻発していることを痛烈に非難、「もう我慢の限界だ。アフガン人を尊重しろ」と声を荒らげた。

 タリバン政権崩壊後、ブッシュ政権の後押しで暫定政権議長に就任、二〇〇四年の大統領選で圧勝したカルザイ氏だが、掃討作戦の戦況は次第に悪化。タリバンの資金源になっている麻薬問題を解決できず、汚職体質への批判を覆すことができないまま、五年の任期満了が近づいている。

 カルザイ氏のストレスの原因は米国だ。クリントン米国務長官は、オバマ政権発足前にアフガンを「麻薬国家」と表現、「能力が低く、ひどい汚職に冒されている」とカルザイ政権を強く批判した。現時点で強力な対抗馬は見当たらないとはいえ、地元記者は「米国に見放された大統領を国民が支持するはずがない」と「カルザイ離れ」を指摘、「再選の見込みはかなり薄い」と予測する。

 ▽追われた犬

 「軍事面での一層の支援をお願いしたい」。カルザイ氏は昨年十一月、オバマ氏が米大統領選で勝利した直後にロシアに書簡を送り、メドベージェフ大統領はすぐに返信。「アフガンの民主化と自立のためにロシアは協力する準備がある」と記し、支援を約束した。

 カブール大のロガリ准教授(政治学)は「米国の離反を見越して先手を打ったカルザイ氏と、アフガンへの影響力強化や米国のけん制を狙うロシアの思惑が一致した」と分析する。

 一方、カルザイ政権を支えてきたジア・マスード第一副大統領は一月二十九日、共同通信に対し「ロシアも大事だが、米国との関係が最も重要だ」と明言。「民間人の犠牲は大きな問題ではない。米国との協調が重要だ」。マスード氏がリーダー格の唯一の全国政党「国民戦線」はカルザイ氏の選挙を支援しない可能性が高まっている。

 ブッシュ前米政権の言いなりで、タリバンに「米国の犬」と呼ばれてきたカルザイ氏。ロガリ准教授は「家を追い出された犬が、別の居場所を探さなければならなかっただけだ」と厳しく指摘。ロシアは具体的な支援策を示しておらず、大統領選後を見据えているとの見方も出ている。(カブール共同=遠藤幹宜)

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200902030342.html