2009年02月03日(火) 12時08分
日銀株式買い取り:識者はこうみる(ロイター)
[東京 3日 ロイター] 日銀は3日に開催した政策委員会・通常会合で、金融機関保有株式の買い入れを再開することを決定した。買い取り総額は1兆円、買い取り期間は2010年4月末まで。市場関係者のコメントは以下の通り。
●金融セクター安定にらみ円売りで反応
<ロイヤルバンク・オブ・スコットランド ヘッドオブFXストラテジー 山本雅文氏>
日銀による株式買い入れが発表されたが、株価を押し上げる効果は限定的としても、銀行セクターの安定につながる。買い入れ自体は予想されていたことだが、きょう発表されるとは思っておらず、タイミングの上でサプライズもあった。リスク許容度が上がることで、為替は円売りで反応している。
ドルの上値を考えるうえでは、後場の日経平均の反応も確認したいところだが、上値メドであった90円を超える可能性もある。ただ、本質的なドル売りトレンドを変えるインパクトはないだろう。
●需給改善要因として市場は好感
<岡地証券 投資情報室長 森裕恭氏>
期末に向けて需給不安が大きくなっていくことを踏まえれば、需給改善要因として目先的には株式市場で好感される可能性が高い。後場のマーケットは買い優勢で始まりそうな感触だ。
ただ、ここで売れば損を確定する格好になるため、銀行が実際に株式を売るニーズがあるのか不明で、実際に機能するかどうか、見極めたいところもある。
一方、これを株価を維持させるための施策とすれば、時価水準でのアナウンスとしては早いような気がする。日経平均で7500円以下が危機的な水準といわれるため、予防的な意味を持たせたのかもしれない。
●プルーデンス政策の一環
<東短リサーチ チーフエコノミスト 加藤出氏>
日銀の金融政策決定会合ではなく、通常の政策委員会での銀行保有株買い取りの決定となった。景気対策や株価押し上げを目的としてではなく、あくまで金融機関の健全化、安定化を図るプルーデンス政策の一環、という大義名分なのだろう。したがって、今後の金融政策運営の中心に据えられるようなものではない。実際、金融機関がどの程度、日銀に株を買い取ってもらいたいのかは不透明だが、政策として準備してあるという安心感は出ると思う。
かつて2002年に日銀が採った政策で、いずれはどこかのタイミングで再導入となるだろうとマーケットは予想していたのではないか。このタイミングでの実施には少し意外感はあるが、日銀の行動としては不思議はない。
●買い取り額拡大への言及に期待
<立花証券執行役員 平野憲一氏>
銀行保有株買い取りの再開の金額、BBB─という対象株式いずれも大きなサプライズはなく、市場ではひとまず評価されるだろう。一方、買い取り額については、午後2時半からの白川総裁の会見で将来的に金額を拡大する用意に言及するかに、市場は期待しているのではないか。状況によっては買い取り額を積み増すというスキームがあれば、安心感が広がる。
日経平均が7800円台で推移しているタイミングでの買い取り再開の発表となったが、予想株価収益率(PER)は25倍に達し、1株利益(EPS)は300円台に落ち込んでいる。PERはヨーロッパ株の8倍程度、米株の12倍程度と比較して日本株の25倍は高く、海外投資家による売りを誘発する。日銀は株価指標に注目して、このタイミングでの発表となったとの見方もできる。
●前回ほど株価へのインパクトは大きくない
<新光証券 エクイティストラテジスト 瀬川 剛氏>
3月期末が近づいており、時価での買い取りであれば売却で実現損を出すのも、日銀に売却せず保有を続けて評価損を計上しても銀行にとってはあまり変わりなく、短期的な効果は限定的だろう。銀行が保有株を中核的自己資本(Tier1)の範囲内に圧縮しようとしていた、前回の買い取り当時とは事情が異なる。当時は銀行の不良債権圧縮を手助けようという意味もあったが、現在の世界的な金融危機は別の形の危機であり、政策のインパクトは小さいだろう。ただ来期以降、資産圧縮を進めたい金融機関には安心感につながるかもしれない。
●需給に与える影響は限定的
<三菱UFJ証券シニアストラテジスト 白木豊氏>
もともと銀行が株式の売り手だったわけではない。銀行保有株を取得しても株式市場の需給に与える影響は限定的だろう。ただ、株式の下落により銀行の体力が低下し、貸し渋りなどが発生することを抑える間接的な効果は多少期待できそうだ。
世界的な規模の負のスパイラルが起きている状況下で、株価の持続的な上昇を見込むためには、少なくとも米国景気にソフトランディングのイメージがみえてくることが条件になる。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090203-00000527-reu-bus_all