2009年02月02日(月) 01時15分
ミャンマー軍政の密室法廷、民主活動家に長期禁固刑相次ぐ(読売新聞)
ミャンマー軍事政権が、密室法廷で民主活動家らに長期の禁固刑判決を連発し、民主勢力の排除を徹底している。
昨年11月からわずか3か月で300人近くが裁かれて有罪となり、最高刑は禁固104年。国際社会は非難を強め、1月31日には国連のガンバリ事務総長特別顧問も同国に入ったが、軍政トップがまともに応じる気配はなく、受刑者らが生きて出られる望みは薄い。人権無視の軍政の横暴から逃れ、タイ国境付近に住む家族は悲痛な叫びをあげている。(タイ北西部メソトで 田原徳容、写真も)
ミャンマー東部ミャワディと川を挟んで対岸にあるメソトは、軍の圧政から逃れて密入国したミャンマー人が数万人も暮らす、タイの町として知られる。
「死刑と同じだよ」
メソトの住宅街の外れの粗末な部屋で、ミャンマーの最大都市ヤンゴンから来たキン・ソー・ミンさん(68)は嘆く。昨年11月、ヤンゴンで長男のゾー・ゾー・ミンさん(46)に禁固65年の判決が下ったのだ。一昨年の反政府デモの発端となった燃料費値上げ抗議デモを主導した一人として逮捕されたのだが、非公開の裁判では、誰も聞いたことがない「電磁記録法違反」という罪状が与えられた。
軍政に異議を唱える方法はない。家族というだけで警察に監視され、たまらず国外に逃れたキン・ソー・ミンさんは「大学生の孫も逮捕された。嫁は仕事を失って心労で倒れた。家族はおしまいだ」と涙ぐんだ。
民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさん率いる国民民主連盟(NLD)の選出議員だったキン・ソー・ミンさんの夫は、あらぬ罪をきせられ、1998年に獄死。三男も不審な死を遂げた。頼みは、タイで反政府活動を続ける次男(44)だが、軍政に追われ、近くのジャングルに潜む。
軍政は、2010年の総選挙で軍主導の政治体制を維持するため、様々な布石を打っている。そのひとつが国民に影響力を持つ民主勢力の排除だ。NLDメンバーや反政府デモに関与した僧侶らを適当な罪で拘束・起訴し、弁論の機会もない即決裁判を実施。禁固刑で活動を封じ、NLDが圧勝した90年の総選挙の二の舞いを避けたいようだ。「民主活動に加わると、こうだ」と恐怖心を植え付ける狙いもあるようだ。
ガンバリ氏の訪問は5か月ぶり7回目。だが、昨年は軍政トップのタン・シュエ国家平和発展評議会議長に会えず、今回も閣僚レベルとの懇談だけに終わりそうだ。スー・チーさんの軟禁解除の見通しもなく、ミャンマー情勢の政治解決を目指す国連の仲介は暗礁に乗り上げたままだ。
キン・ソー・ミンさんは、国連などには何も期待できないとし、こうつぶやいた。
「もう、これ以上家族を失いたくないだけ」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090202-00000001-yom-int