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2009年02月02日(月) 00時00分

面白い人をより面白く読売新聞


撮影・松田賢一
バラエティー番組で活躍するカメラマン 辻 稔(つじみのる)

 「僕の仕事はあくまで出演者やディレクターのお手伝い。でも、面白いことをやった人をもっと面白く見せたい。100%を150%にするのが、僕のテーマなんです」と語る。

 「めちゃ×2イケてるッ!」(フジテレビ系)、「アメトーーク」「ロンドンハーツ」「やべっちFC」(以上テレビ朝日系)など、人気バラエティー番組に引っ張りだこのフリーカメラマン。タレントや演出家からの信頼も厚く、見せ所を決してはずさないカメラワークから「バラエティー界のロバート・キャパ」と呼ぶ放送作家さえいる。

 たとえば、昨年夏のフジテレビ系「27時間テレビ」。「やべっち寿司」のコーナーでは、30人近い出演者が動き回る修羅場だったが、約2時間に及ぶ生放送の大半を1人で撮り切った。「明石家さんまさんと矢部浩之君専用のカメラ以外は、全部僕。台本はあるけど本番では何が起きるか分からない。『次はこれが来そう』と常に空気を察して予測する力が、カメラマンには絶対必要なんです」


「アメトーーク」では自らも撮りつつ(手前左端)、無線マイクでほかのカメラに指示を出す

 専門学校を経て、20歳で番組制作会社にカメラマンとして就職。「夢で逢えたら」「志村けんのだいじょうぶだぁ」(以上フジテレビ系)、「ウッチャンナンチャンのウリナリ!!」(日本テレビ系)、「内村プロデュース」(テレビ朝日系)といった数々のバラエティー番組で場数を踏み、4年前からフリーになった。

 担当番組にはすべて全力を注いできたが、中でも雨上がり決死隊司会の「アメトーーク」に、強い思い入れがあるという。

 「普通は、回っているカメラをその場で切り替える専門の係(スイッチャー)がスタジオにいる。でも、この番組は7、8台あるカメラを全部回して、後で編集するロケのような撮り方。カメラについてはチーフの僕に全部任されている」

 そのため、自ら撮影をしながら、ほかのカメラマン全員に無線マイクで指示を飛ばす荒業をこなす。「ハイ、ワン(ショット)!」「サンド、ツー!」(お笑いのサンドウィッチマンをツーショット)。司会の宮迫博之が「番組名物です」と評するほどの大声がスタジオ中に響く。「スタッフは編集がものすごく大変なのに、僕を信用してこの撮り方にしてくれている。だから、テレビを見ている人が一番見たい映像を、逃すわけにはいかない」

 数年前から、自分の仕事内容を紹介するブログ(http://yaplog.jp/tsuji-cam/)を書いているが、今までで反響が最も大きかったのは、2005年に「内村プロデュース」の終了が発表された直後。「それまでは1日800ヒットぐらいだったのが、いきなり1万2000。『番組をやめないで』というファンの熱い書き込みは、今でも忘れられない」という。

 今後の目標を尋ねると、「まずは現状維持です」と答えた後、しばらく考えてからポツリと言った。「でも、もう1本ぐらいは仕事を増やせる。できるなら、内村光良さん、さまぁ〜ず、TIM、ふかわりょう君。あの『内P』メンバーと、またぜひ一緒に、何かやりたい」(森重達裕)

http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/tv/20090202et09.htm