将棋の矢内理絵子女流名人(女王、29)と挑戦者・清水市代女流王将(40)の「アルゼ杯第35期女流名人位戦」5番勝負第2局が1日、千葉・野田市の関根名人記念館で行われ、後手の清水が170手で制し、1勝1敗の五分に戻した。第1局と同じく約8時間に及んだ熱戦は“アラフォー”世代の粘り勝ちで、5番勝負の行方も、もつれにもつれそうだ。第3局は18日、東京・千駄ケ谷の将棋会館で行われる。
アラフォーは勝利後も落ち着いていた。「序盤から主導権を握ることができてよかったのですが、どこまでいっても最後まで難しい将棋でした」雪のように白く透き通った表情のままの清水は、挑戦者の立場を崩さず、矢内の一歩後をついて大盤解説場に移動した。司会者が勝者インタビューで矢内にマイクを渡してしまうほどの謙虚な振る舞いだった。
立会人の真田圭一7段は「形勢が二転三転し、最後の最後まで分からない名局でした」とうなった。立会人でさえ120手目の7五飛辺りで投了と読んだが、矢内の粘りも手伝い、1、2局合わせ16時間の大一番となった。ここまでの熱戦を展開できるのは、この2人しかいない。
今回は挑戦者という立場だが、一世代上の清水の気品には、矢内も一目置く。決戦前日、両者の記念撮影で一部カメラマンからガッツポーズを要請された。困惑して何も言えない矢内の横で「将棋は文化ですから、そういうことは遠慮させていただきます」と清水はきっぱり言い切った。大相撲の横綱・朝青龍にも聞かせたい一言だった。
“近代将棋の父”と呼ばれる関根金次郎十三世名人の出身地を記念して04年に作られた対局場でのタイトル戦初開催。日本将棋連盟の支部として、唯一の人名支部である関根金次郎支部との縁が清水にはあった。05年2月のNHK杯出場女流棋士決定戦(対中井広恵)で訪れた際にも快勝している。「前回と同じく、いい結果が出せてうれしいです」。清水は“伝説の名人”を守護神につけ、前人未到の通算10期目に挑む。
◆矢内「序盤ダメ」 ○…終盤に粘ったが届かなかった矢内女流名人は「序盤が全然ダメで、ガッカリしていました。あまり自分の展開にならなかったのが残念です」。敗れた悔しさよりも、何か吹っ切れたようなサバサバとした表情で振り返った。これで1勝1敗のタイ。風邪をひくなど、2局目は体調面で優れないこともあったが、18日の3局目に気合を入れ直した。
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