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2009年02月01日(日) 01時23分

金融危機で試されるプーチン与党 政策批判に官製デモで対抗 産経新聞

 【モスクワ=遠藤良介】金融危機の深まるロシア各地で31日、プーチン首相(前大統領)率いる与党「統一ロシア」が内閣の経済政策を支持する大規模な官製デモを開いた。これは共産党などが物価や失業率の上昇に抗議して計画した反政権デモに対抗したもので、この日は各地で“デモ合戦”の様相となった。政権は街頭行動が政権倒壊の端緒となることを恐れており、統一ロシアは過剰なまでに「プーチン防衛」に躍起となっている。

 共産党はこの日、モスクワや東シベリアのチタ、極東のウラジオストク、西部のカザン共和国など各地で最大2500人規模のデモを開き、プーチン首相の退陣などを求めた。また、モスクワでは他の反政権団体もデモを行おうとして少なくとも10人が治安当局に拘束されている。これに対し、統一ロシアは全国20都市以上でデモを組織し、モスクワでは約9000人が「プーチンとともに勝利しよう」などと政権擁護の気勢を上げた。

 統一ロシアは2001年、大統領に就任したばかりのプーチン氏が議会に支持基盤を得るべく、当時の3政党を合同して結成させた。その後、小選挙区制度の廃止や得票率制限の引き上げ、報道・言論統制でリベラル政党が壊滅的打撃を受けたのに対し、統一ロシアは中央・地方議会で圧倒的多数派を占める。

 にもかかわらず、反政権デモに過敏に反応するのは、プーチン氏が上から人工的に築いたこの党に「プーチン支持」以外の政策方針がなく、プーチン氏ひとりが国の求心力を握っている脆さの裏返しだ。近隣国のグルジアで「バラ革命」(03年)、ウクライナで「オレンジ革命」(04年)によって街頭行動から親欧米政権が誕生しており、この国のエリートにはデモへの恐怖心が強い。

 近い将来、プーチン首相が退陣に追い込まれるとの見方は多くないものの、09年は高度成長から一転、10年ぶりのマイナス成長が予測されているだけに先行きには不透明感が漂う。

 在モスクワ・カーネギーセンターのマラシェンコ氏は「石油価格の上昇局面で蓄えられた各種の国家ファンドは秋までにつぶれる可能性がある。経済危機が各地で深刻化したとき、責任を負うのは大統領でなく首相のプーチン氏だ」と指摘し、「統一ロシアもプーチン氏の支柱とはなり得ず、プーチン氏の力が弱まれば砂のように崩れるだろう」と話している。

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