2009年02月01日(日) 23時54分
自治体の「命名権」ビジネス窮地不況で企業が二の足 応募ゼロ増加(産経新聞)
地方自治体が厳しい台所事情を補おうと、公共施設で命名権(ネーミングライツ)の導入を進める一方で、企業の応募がないケースが増加している。米国発の経済危機に端を発した景気低迷が逆風となっている。「長期契約なら安定収入につながる」と、地方を救う“切り札”としてもてはやされてきた命名権も、先行きが見えない経済状況の前に窮地に立たされている。 (小川寛太)
国内の命名権は、平成9年ごろから本格導入され始め、公共施設では、15年に食品会社「味の素」が5年分を12億円で東京都などから命名権を購入した「味の素スタジアム」(東京都調布市)が最初の事例として知られる。
命名権のコンサルティングなどを行う「ベイキューブシー」(千葉市)によると、民間も含めた各年別の命名権の契約成立数は、15年は2件だったが、17年には14件と2ケタにまで増え、20年には43件と過去最高を記録。うち8割以上を公共施設が占めた。施設の運営経費だけでなく、歳入の一部として、命名権を売りに出す自治体が多かったためだ。
ただ、20年に自治体が公募を始めた公共施設57件のうち、企業の応募がなかった施設は34件でこちらも右肩上がり。新潟県では、全国初の県道への命名権導入を決め、観光道路2路線で募集を開始したが、昨年9月の募集終了までに応募はなかった。2路線の契約料はそれぞれ年1000万円と年800万円で、「年間維持管理費の半額ほどを想定した」(新潟県)。
新潟県は、募集終了後に企業側から「設定金額が高い」と指摘されたという。他の多くの自治体も「先駆的な同種施設の事例を参考に契約料を設定した」というものの、企業側の反応はやはり同様という。
こうしたなか、景気後退で企業はさらに命名権の購入に二の足を踏むようになった。
秋田県は昨年5月まで命名権を募集し、応募がなかった県立野球場(こまちスタジアム)など3施設で、再募集に向けて企業訪問などを実施してきたが、景気情勢の好転が見込めないため、現在は一時中止している。同県の担当者は「来年度には再募集したいが、今の経済状況が続けば難しい」と頭を抱える。
欧米で、命名権は、10年以上で契約されているというが、現在の景気では、こうした長期契約は日本では望み薄だ。味の素も新たに6年分14億円で「味の素スタジアム」の契約延長をしたものの、「10年以上の長期になると契約期間の経済環境や企業業績の予測は難しい」と、長期の契約にしなかった。
ベイキューブシー命名権事業部の盛光大輔ディレクターは「現在の景気で企業は広告費の削減を進めているが、命名権は地域貢献というイメージアップにつながる。テレビCMなど他の媒体と比べても割安感があるものは多い」と説明。その上で、自治体側には「企業にわかりやすく命名権の意義や利点を伝える努力が必要だ」とアドバイスしている。
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