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2009年02月01日(日) 21時20分

<ジンバブエ>市民の南ア脱出続く 不衛生な環境に不安毎日新聞

 ムガベ大統領の独裁体制下、経済混乱やコレラ感染が深刻化しているアフリカ南部ジンバブエから隣国・南アフリカに向け、市民の脱出が続いている。ジンバブエの野党は先月末、連立政権入りを受け入れたが、政情安定化のめどは立っていない。南ア側の国境付近には大規模なジンバブエ人集落が連なり、数万人規模とみられる避難民は不衛生な環境で将来の不安に震えていた。【メッシーナ(南アフリカ北東部)で高尾具成】

 南ア北東部のジンバブエとの国境の街メッシーナ。違法に越境してきたジンバブエ人向け一時避難所「ショー・グラウンド」では、南ア政府の短期滞在証明書(6カ月間)を得ようと、申請窓口を前に数千人が徹夜で行列を作っていた。滞在証を得られれば仕事を探せるが、身分証などがないと取得に数週間以上かかる。

 現地は雨期だが、避難所には雨露をしのぐテントもない。ごみは散乱し、汚水のにおいが漂う。水道施設は数カ所のみ。飲料水は使い古しの汚れたペットボトルにためられる。共同トイレは土に穴を掘っただけだ。

 26歳の女性、エマ・ムネゴさんは地面に1枚だけ敷かれた段ボール上で、突っ伏すようにして震えていた。今年初め、ジンバブエの首都ハラレ郊外から違法に国境を越え、逃げてきた。「十分に食べられず、悪い水を飲んだ」と途切れ途切れに話した。

 世界保健機関(WHO)によると、ジンバブエではコレラの死者数が3000人を超え、感染者数は6万人以上に及ぶ。3歳と8歳の男児を連れた母親、ムコムバチョコさん(26)は次男にコレラ感染の疑いがあるという。だが、「(南アの)滞在証明書を得るまで、ここを動くわけにはいかない」と話す。

 南ア政府は、人道支援のためジンバブエから避難民を受け入れてきたが、人数が多すぎて避難所の整備や滞在証明書の発行が間に合わないという。

 避難民の困窮ぶりとは裏腹に、メッシーナの幹線道路は夜になると、食料や日用品をジンバブエに持ち込み、高値で売りさばく「にわか商人」でにぎわう。関係者によると、品不足のジンバブエでは南アのせっけんが2倍の値段で売れる。「ジンバブエのパスポートを持っていればひと財産築ける」と言うが、ジンバブエ政府は市民の国外流出を防ぐため、先月からパスポート申請料を650米ドル(約5万8000円)と従来の3倍につり上げている。

 ジンバブエ情勢 昨年3月の大統領選の結果をめぐり、ムガベ大統領率いる与党「ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線」と、最大野党「民主変革運動」(MDC)の対立が深刻化。1月30日、MDCが連立政権構想を受け入れ、2月13日に新政権が発足する見通しとなった。不安定な政情は極度のインフレやコレラの蔓延(まんえん)に拍車をかけた。

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