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2009年02月01日(日) 21時14分

<命の講座>「出前」続ける群馬の助産師、小4道徳副読本に毎日新聞

 神戸市で97年に起きた小学生連続殺傷事件をきっかけに、小中学校を訪問して命の大切さを教えてきた助産師の出前講座の内容が、小学校4年生の道徳の授業で来年度から使われる副読本に採用された。赤ちゃんが生まれるまでの苦難は母親以上と伝え、「生まれてきた自分をほめて」と訴えている。

 執筆者は群馬県太田市の助産師で県助産師会会長、鈴木せい子さん(61)。子供同士が当事者だった神戸市の事件に衝撃を受けた。生命誕生に携わる立場から生徒・児童に「生命の大切さ」を伝えたいと思い、県助産師会の有志と出前講座を始め、延べ1000校を超す小中学校を巡った。

 講座は折り紙に針で開けた穴を見せることから始まる。「これが受精卵の大きさ。みんなも最初はこんな小さかったんだね」。胎児の心音を聞かせ、「みんなの倍、ドキドキしてるね。それだけ頑張っているんだよ」と語りかける。最後は必ず「みんな頑張って生まれてきてすごいね。生きてるだけで100点満点」と締めくくる。

 講座に関する長崎大の上薗恒太郎教授(教育学)の調査では、「自分」という言葉から「大切」といった肯定的な言葉を連想する子供が、受講前は10.5%だったのに対し、受講後は25%に伸びた。

 講座の存在を知った教材販売会社「文渓堂」(本社・岐阜県羽島市)の担当者が、道徳の指導要領の一つ「生命を大切にする」にふさわしいとして、小学4年生の副読本への掲載を打診。鈴木さんが講座を要約した文章を執筆した。副読本は約8万部発行し、全国の小学校で使われる。

 鈴木さんは「自分を大切に思うことができれば、他人への思いやりが持てるようになり、いじめもなくなる。全国の子供にメッセージが伝わればうれしい」と話している。【伊澤拓也】

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