家電量販大手のビックカメラ(東京)が虚偽内容の有価証券報告書などを基に公募増資したとされる問題で、証券取引等監視委員会は三十一日、不正な増資の際に持ち株を売却したとして、金融商品取引法に基づき同社の
虚偽記載に絡み企業トップへの命令が勧告されるのは初めて。課徴金額も個人としては過去最高額となる。
監視委は併せて法人としてのビックへの命令も勧告し、同社への課徴金額は二億五千万円前後に上る見通しだ。
監視委の調査によると、ビックは自社とグループ会社が出資した匿名組合を通じて特定目的会社(SPC)に資金を流し、池袋本店などの不動産を二〇〇二年八月に売却、家賃を払って店舗の使用を続けた。
〇七年十月に売却不動産を買い戻した際、組合が清算されると、ビックは受け取った清算配当金約四十九億円を利益として計上、〇八年二月期の半期報告書などに記載したとされる。
日本公認会計士協会の実務指針によると、自社の出資比率が5%を超えるSPCに不動産を売却した場合、売買取引ではなく不動産を担保とした資金調達とみなされるため、売却額を借入金として処理しなければならない。
監視委はビック側のSPCに対する出資比率は実質5%以上だったと認定。清算配当金額も不動産の評価額が水増しされたもので、利益として計上できないと判断した。
ビックは〇八年六月に約百十七億円を調達する公募増資を実施。その際、新井会長は約六十億円の売り出し価格で持ち株を売却した。
監視委は架空利益が計上された決算を基に株価が設定され、投資家の判断を誤らせたとみている。