2009年02月01日(日) 18時40分
狂気の果て? 「穴」に執着した元ピアス店主の胸中は…(産経新聞)
法廷に現れた2人の男は耳にピアスを光らせ、1人は約20センチもの高さに髪を巻き上げたとっぴなヘアスタイルだった。保釈の身とはいえ、とても罪を認めて反省しているようには見えなかった。
2人はピアス店元経営者(25)と元従業員(22)。医師免許がないのに、メスなどを使って男女4人の耳や性器など体の一部にピアス穴を開け、アクセサリーを着けるなどの医療行為を繰り返したとして、医師法違反(無資格医業)の罪で起訴された。
大阪地裁で1月27日に行われた初公判で2人は罪状を全面的に認めた。元経営者は「もう二度としません」と謝罪の言葉を繰り返す一方、「パーフェクトにやっていた」などと自分の“腕”を自慢するような発言も飛び出して…。
× × ×
初公判では被告人質問も行われ、弁護人は元経営者に対し、人の耳や性器などに穴を開ける行為に興味を持ち始めた時期を問い、元経営者は「中学を卒業して16歳のころ」と答えた。
弁護人「人の体には動脈とかがあって危険だと思うが、どうやって(身につけたのか)」
元経営者「医学書を読んだり、自分の体で実験したり…」
弁護人「他人にピアッシングを始めたきっかけは」
元経営者「友人や先輩からやってくれといわれました」
弁護人「それが口コミで広がり、評判が高まったということか」
元経営者「はい」
得意げな口調で答える元経営者。ただ、なぜ人体に穴を開ける行為にここまでの情熱を傾けたのか、やりとりからは全くうかがえない。髪を高く巻き上げた元従業員は無表情のまま被告席に座り続けている。
検察側の冒頭陳述などによると、元経営者は平成19年11月から、若い女性に人気のあるおしゃれな店が立ち並ぶ大阪市西区南堀江のビル一室で「ピアススタジオ インサニティー」を開業した。
手術は「ニードル」と呼ばれる器具などさまざまな器具を使い、耳に限らず、舌や乳首、性器など体のあらゆる部分に穴を開けてアクセサリーを装着するものだった。麻酔を使うこともあった。20年9月までの間に約1700万円の売り上げがあったという。
インサニティーとは狂気などを意味する。そんなおどろおどろしい店名を付けた元経営者にとって、今回の無資格医業の行為は金もうけ目的だけでなく、常軌を逸した人間の営みに何らかの快楽を覚えたものだったのかもしれない。
不正が発覚したのは、体に25カ所の穴を開けた客の女性が発熱し、警察に通報したのがきっかけだった。
弁護人「徐々に高度な手術を客から頼まれて危険なこともあったでしょう。不安はなかったのか」
元経営者「初めてやる手術の際は『もしも…』と思うことはありました」
弁護人「当時の手術についてどう思う」
元経営者「死んでしまうこともあったかもしれません。今になってみて何もなかったのでよかった」
特に悪びれることなく当時の行為について語り続ける元経営者。検察官は厳しい質問をぶつけた。
検察官「(逮捕当時は)なぜ自分が捕まらないといけないのかと思ったんじゃないの」
元経営者「当初は…」
検察官「犯罪だと分かっていたでしょう」
元経営者「客がやってほしいと言うので。やるならパーフェクトにやっていましたし…」
検察官「じゃあ、法律がおかしいの」
元経営者「いいえ。そんなことは考えていません」
検察官「医師免許を取ろうとは思わなかったのか」
元経営者「高校も出てませんし…」
検察官「腕に自信があるんでしょう? またやってくださいって言われたらどうするのか」
元経営者「もう人生をだめにしたくないですから」
× × ×
気になったのは2人の耳に光るピアス。なぜ、外してこなかったのか。裁判官に与える心証もよくないように思えた。
検察官は2人にその点を指摘しなかったが、弁護人は裁判官に説明した方がいいと思ったのだろう。ピアスをしたまま出廷した理由をわざわざ確認した。
弁護人「いまなおピアスをしているが、何か理由があるのか」
元経営者「はい。取れるものはすべて外してきました。でも道具が警察に押収されて、外すことができないんです。病院でもできないもので…」
ピアスにもさまざまな種類があり、専用器具でなければ外せないものもあるという。ただ、保釈からすでに1カ月以上経過している。本当に外せないものなのだろうか。
元経営者は「親や巻き込んでしまった元従業員に申し訳ないことをした」と謝罪したが、言葉だけが上滑りしているような印象が残った。
裁判官は2人に何も質問することなく、閉廷を告げた。(津田大資)
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