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2009年02月01日(日) 14時54分

オバマ米大統領の就任演説をどうみる 政治学の2教授に聞く産経新聞

 バラク・オバマ第44代米大統領の20日の就任演説をどう評価するか、クレアモント・マッケナ大学(カリフォルニア州)のジョン・ピトニー教授(政治学)と、ノートルダム大学(インディアナ州)のダレン・デービス教授(政治学)に聞いた。(ワシントン 有元隆志)

 ■ピトニー教授

 ——演説の全体的印象は

 「オバマ大統領は非常にすばらしい演説をした。就任演説として含まれるべき内容が入っている。われわれが抱えている問題の重大さを明確に示し、同時に国民に対し解決可能であるとの安心感を与えようとした。米国は平和を欲するが、敵に対して国を守ることも強調した。さらに、国の団結を訴え、前政権とは異なるやりかたで進めていくることを示唆した」

 ——オバマ大統領はしばしば同じイリノイ州選出だったリンカーン第16代大統領と自らを比較してきたが、就任演説ではリンカーンに直接触れなかった

 「オバマ大統領は多くの機会でリンカーンに言及してきた。大統領選への立候補も、リンカーンが法律事務所を構えていたところからそう遠くないイリノイ州スプリングフィールドの旧州議事堂前で行った。偉大な大統領であったリンカーンと自らを比べすぎるとの批判も出ていた。リンカーンとの比較をしなかったのは賢明といえるだろう」

 ——黒人初の大統領であるオバマ氏だが、選挙戦では人種問題に力点を置かなかった。今回の演説でも同様だった

 「オバマ大統領はすべての米国人の大統領だ。大統領は演説のなかで自らの経歴にそれとなく触れたが、彼のことではなく、米国民に向かって大統領として何をするかに力点が置かれた。オバマ氏は自分が初めての黒人大統領であることを指摘する必要はない。世界中のだれもが知っている」

 ——オバマ大統領は選挙戦を通じ国際社会での米国の信頼を回復すると繰り返してきた。国際社会に向けて明確はメッセージは送ったか

 「送ったと思う。大統領は米国として平和を望むが、常に国を守る用意はしていると明確にした。その点ではケネディ元大統領の就任演説での訴えと似ている」

 ■デービス教授

 ——全体的な印象は

 「予想されたとおり、オバマ大統領の演説はこれまでで最も雄弁で、感情に訴えるもので、同時に厳しく現状を見据えた内容だった。演説を見た米国人たちは、国際社会のなかで米国が新たに出発する日を迎えたことを理解すべきであろう。

 演説では米国社会が直面している問題について耳当たりのいいことは言わなかった。伝統的なイデオロギーによって自動的に判断するやり方は問題解決にとってむしろ障害であると明確にした。

 オバマ大統領の就任演説をみた世界の人々は、民主主義の力、寛容さ、自由のすばらしさを理解すべきだろう」

 ——オバマ大統領は就任演説ではリンカーンに触れなかった

 「リンカーンは就任式前の行事で十分取り上げられた。それで十分だ」

 ——人種問題に力点は置かなかった

 「オバマ大統領は民主党予備選でも本選挙でも人種問題はほとんど取り上げてこなかった。就任演説で人種問題を提起すると予想する向きは少なかった。さきほどの質問に戻るが、リンカーン大統領に言及すると、黒人奴隷解放問題に触れざるを得ない。将来を見据えた演説のなかで、人種問題に力点をおかないことは賢明であったといえるだろう」

 ——オバマ大統領は国際社会での米国の信頼を回復すると繰り返してきた。国際社会に向けて明確はメッセージは送ったか

 「大統領の世界に向けてのメッセージは非常に明確だった。『腐敗や欺瞞(ぎまん)、反対者への抑圧を通じて権力の座にしがみついている者たちよ、あなたたちは歴史の誤った側にいる。もし握っているこぶしを開くなら、われわれは手を差し伸べる』と述べたことは、非常に的を射ている」

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