「恥を知れ」—。オバマ米大統領(47)が29日、ウォール街の幹部らを一喝した。巨額の公的資金を注入されながら、金融機関の役員らが高額なボーナスを受け取っていたという同日付のニューヨーク・タイムズの報道に触れ、「無責任の極み。恥ずべきこと」と厳しく批判。「100年に一度」と言われる経済危機の発端となった米金融界の野放図ぶりに、冷静で知られるオバマ氏もブチ切れてしまったようだ。
就任9日目。新大統領が初めて怒った。怒りの発端となったのは、29日付の米ニューヨーク・タイムズ紙。同紙はニューヨークの金融機関が支払ったボーナスの総額を推定184億ドル(約1兆7000億円)とし、前年より減少したものの、過去6番目の高い水準だったと報じた。
世界的な金融危機の発端となったにもかかわらず、依然として経営陣に高額ボーナスが支払われているという事実に、オバマ氏はがくぜん。ガイトナー財務長官らとの会談後、記者団の前で怒りを爆発させた。
「新聞で読んだのだが…」と、自らこの記事について切り出すと「無責任の極み」「恥ずべきこと」と一喝。「破綻(はたん)寸前で納税者に助けを求めたウォール街の住人は、多少なりとも節度や規律、責任感を示すべきだ」と指摘した。左右のカメラに目線を向け、一語一語に力を込めながらの激しい批判。「経営者たちがボーナスを受け取ることも、いつかできるだろう。しかし、今はその時ではない」とその“強欲”さを厳しく戒めた。
破格のボーナスをめぐっては、大手証券のメリルリンチが救済合併直前に支給を決め、当局の捜査対象になっている。また、金融大手のシティグループが5000万ドル(約45億円)で、専用ジェット機の購入を計画していたことが発覚。その後、購入を中止しているが、公的資金を受けた金融機関の相次ぐ“モラルハザード”も、この日の発言に影響を与えたようだ。
緊急経済安定化法に基づく公的資金枠7000億ドルのうち、すでに支出された3500億ドルの大半が金融機関向けで、残る3500億ドルの活用策は近く決められる。選挙戦中には、共和党陣営から「銃所持禁止を支持している」などと中傷するネガティブ広告が飛び交ったが、冷静にかわしていたオバマ氏。クールさをかなぐり捨て声を荒らげた背景には、難しいかじ取りの中で、金融機関を“甘やかさない”姿勢を国民に示す狙いがあったようだ。
http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20090131-OHT1T00085.htm