自分が開設したインターネットのホームページ(HP)で、外食店の経営会社を「カルト集団」と中傷したとして、名誉棄損罪に問われた東京都大田区の会社員橋爪研吾被告(37)の控訴審判決が30日、東京高裁であった。
長岡哲次裁判長は、「インターネットの個人利用者が書き込んだ情報に限り、名誉棄損罪の適用を緩めるのは、被害者保護の点で相当ではない」と述べ、無罪とした1審・東京地裁判決を破棄し、検察側の求刑通り、罰金30万円を言い渡した。
1審判決は、個人がネット上に掲載した情報について、「信頼性は低いと受け止められており、被害者の反論も容易」として、〈1〉わざとウソの情報を発信した〈2〉個人でもできる調査も行わずにウソの情報を発信した——場合にのみ名誉棄損が成立するという新たな基準を提示。橋爪被告が書き込んだ内容について、「事実ではないが、ネットの個人利用者に要求される程度の調査は行っている」と述べ、名誉棄損には当たらないと認定した。
控訴審判決は、「ネット上のすべての情報を知ることはできず、書かれた側が反論できるとは限らない。見る側も、個人の発信する情報が一律に信用性が低いという前提で閲覧するわけではない」と指摘。個人のネット利用者に限って名誉棄損罪が成立するハードルを高くすることは認められないとした。
園田寿・甲南大法科大学院教授(刑法・情報法)の話「ネット上の中傷は、大半が一方的なものだが、お互い論争が高じた結果の場合もある。ブログの登場などコミュニケーションは多様化し、名誉棄損の成否の認定では、反論できる状況だったのかどうかなど、実態に即した判断が求められる」
http://www.yomiuri.co.jp/net/security/s-news/20090202nt0c.htm