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2009年01月31日(土) 13時00分

藤里町の2児殺害:検察と弁護側、「記憶なし」巡り対立−−控訴審結審 /秋田毎日新聞

 ◇検察「虚偽」、弁護側は「健忘」
 藤里町で起きた連続児童殺害事件をめぐる仙台高裁秋田支部での畠山鈴香被告(35)の控訴審公判は、30日結審した。控訴審になって畠山被告が二つの事件について記憶をなくしていると訴えていることについて、検察側と弁護側の意見が対立した。判決は3月25日に同支部で言い渡される。
 この日検察側は、「長女彩香ちゃん(当時9歳)殺害の記憶を失っていたという畠山被告の主張は信じがたく、米山豪憲君(同7歳)殺害についても動機を思い出せないという供述は虚偽だ」と指摘した。
 さらに証拠採用された豪憲君の両親の意見陳述を引用し、峻烈(しゅんれつ)な遺族感情を考えれば1審の無期懲役判決は軽きに失していると主張。「被告はもはや人間性を喪失している」と強調し、死刑判決以外は考えられないとした。
 これに対し弁護側は「責任を逃れるには不利になることも話しており、本当に健忘している」とし、無意識的な願望などが働いたと主張。彩香ちゃん転落の記憶は豪憲君殺害時には失われており、豪憲君殺害の記憶も失っている以上動機は不明で、二つの事件の真相は明らかになっていないと強調した。
 さらに畠山被告と面談した精神科医の意見書をもとに、畠山被告は人格障害があり反省をしたくともやり方がわからない状況だと説明。畠山被告に希望を持たせて更生と事件の記憶を思い出すためにも有期刑を選択すべきだと主張した。【野原寛史】
 ◇被告供述調書の信用性を疑問視−−性格鑑定書不採用、長谷川教授が会見
 畠山鈴香被告の控訴審結審を受け、弁護側の依頼で性格鑑定書の作成をしたが証拠採用されなかった東海学院大学大学院の臨床心理士、長谷川博一教授が30日、県庁で会見した。畠山被告が接見で供述調書について「厳しい取り調べ環境で本人も分からないまま指印した」と話したことを明かし、信用性を疑問視。「彼女が場当たり的に(記憶が)飛んでいる部分を補ったから(供述の)変遷が起きた」と指摘した。
 そのうえで「事件の根底部分がはっきりしない。(畠山被告の)本当の記憶を取り戻さないと本人も分からないまま。こんな状況で判決を出せるものではない」と強調した。【坂本太郎】

1月31日朝刊

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090131-00000075-mailo-l05