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2009年01月30日(金) 06時02分

成田空港で「新型インフル」?!職員も一時隔離…実は覚せい剤中毒スポーツ報知

台湾人の男が運び込まれ、新型インフルエンザの発症を疑われた成田空港内のクリニック

 香港から成田空港に到着した台湾人の男が入国チェック中に突然倒れ、簡易検査で新型インフルエンザの発症を疑われたため、立ち会った入国管理局の職員らが一時隔離されるなどの騒ぎがあったことが29日、分かった。成田空港では「隔離などの事実はなかった」と否定している。男は大量の覚せい剤入りの袋をのみ込んで中毒症状を起こしていたことが判明。国内で数十万人の死者が出ると推定されている新型インフルエンザの上陸はなかったが、迫り来る脅威と危機感の高まりを裏付ける形となった。

 関係者によると、騒ぎがあったのは22日。台湾人男性は午後1時53分着の香港発、キャセイ548便で成田空港に到着した。午後4時ごろ、空港第2ターミナルビルの税関検査場内でけいれんを起こして倒れ、昏睡(こんすい)状態に陥ったという。

 高熱があり、すぐに空港内の日本医科大成田国際空港クリニックでインフルエンザの簡易検査を実施したところ、陽性反応が出た。けいれんなどの特異な症状も出ていたことから、クリニックは新型インフルエンザの可能性も考えられるとして関係機関に通報した。

 男に近づいた税関や入管の職員や航空会社のスタッフらに隔離措置がとられ、クリニックは閉鎖。男が接触した場所を消毒するなどの騒ぎになった。しかし男はその後、搬送された成田市内の総合病院で精密検査を受け、反応は陰性と出た。

 さらにエックス線検査でのみ込んだ約90個もの覚せい剤入りの袋が腸の中から見つかり、男は中毒症状だったことが判明。職員らの隔離措置は解除。「新型インフルエンザ上陸」の危機は去った。関係機関の幹部は「思わぬ実地訓練になった格好で、検討課題が確認された」と話している。

 ただし成田空港によると、クリニックから「陽性」の報告は受けておらず、総合病院での精密検査後、クリニックから「インフルエンザではなかった」との連絡が来たという。「スタッフの隔離なども行われておらず、なぜそのようなことが報じられたのかは分からない」とも説明。一方で、その後クリニックからは「念のために消毒してほしい」と要請され、クリニック内のみをエタノールで消毒したという。

 出現が「時間の問題」と恐れられている新型インフルエンザは、誰も免疫を持っていないため世界的な大流行(パンデミック)が危険視されている。厚生労働省のホームページによると、新型インフルエンザが全国的に流行した場合「入院患者は53万人〜200万人、死亡者は17万人〜64万人」と推定されているという。

 しかしこれも、過去に流行したアジアインフルエンザやスペインインフルエンザのデータに基づいた計算。実際に出現しないと規模の大小は分からず、まさに未知数の脅威が忍び寄っている。

 ◆新型インフルエンザ 鳥などのインフルエンザウイルスが人に感染しやすいよう性質を変えて発生する。WHOは全世界で1億5000人以上の死者が出るとしている。

 20世紀は1918年発生のスペイン風邪(死者約4000万人)をはじめ10〜40年間隔で計3回の大流行があった。68年発生の香港風邪から既に40年が経過し「次がいつ発生しても不思議ではない」とされる。

 厚労省のホームページによると、新型インフルエンザへの変異が懸念されている高病原性鳥インフルエンザの症状として、これまで東南アジアなどで確認された事例では、発熱、せきなどに加え、下痢など。致死率は60%以上と極めて高かった。

 ただしこれが人から人へ感染する新型インフルエンザウイルスに変異した場合、その症状の程度は「予測が困難」。日本政府は人口の約4分の1の人が感染、医療機関を受診する患者数は最大で2500万人と仮定して、対策を講じているとしている。

http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20090130-OHT1T00057.htm