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2009年01月30日(金) 20時15分

【テレビ評】「天地人」第4回、上杉景虎の孤独と安らぎツカサネット新聞

戦国武将・直江兼続の生涯を描くNHK大河ドラマ「天地人」第4回「年上の女(ひと)」が2009年1月25日に放送された。前回の「殿の初恋」に続き、大河ドラマらしからぬサブタイトルである。

景勝は前回から引き続き恋する男子である。初恋相手のお船(常盤貴子)の前で必死に冷静さを装う姿が見ていて恥ずかしくなるほどである。そのお船は実は兼続に気がある様子だが、鈍感な兼続は気がつかない。鈍感さに苛立つお船は会えば兼続に憎まれ口を叩いてしまう。ニヤニヤしたりドキドキしたりする青春ドラマになっている。

今回は上杉景虎(玉山鉄二)と華姫(相武紗季)の婚儀が行われる。北条氏康の七男として生まれながら、景虎は親からは大事にされず、寺に入れられるか、他家に養子に出されるかであった。華姫との婚儀によってようやく安らぎを得た思いになる。景虎を慕う華姫は、「常に景虎様の妻でいる」と約束する。微笑ましい夫婦であるが、はらりと花が散る演出が二人の未来を暗示していて切なくなる。

景虎は上杉謙信(阿部寛)の死後、御館の乱で上杉景勝(北村一輝)・兼続(妻夫木聡)と対決することになる。物語前半の敵役となる存在だが、この作品では実家の北条家からも大切にされず養子に出された景虎の孤独な心情を吐露している。

兼続を主人公として盛り上げるならば、上杉家乗っ取りを企む悪漢として景虎を描くこともできた。その種の単純な善悪二元論にしないことで物語の奥行きは深まる。昨年の大河ドラマ「篤姫」の小松帯刀と同様、歴史に埋もれた人物に光を当てる姿勢は高く評価する。

一方、御館の乱は景勝側の先制攻撃であった。景虎が悪玉でないならば先制攻撃には大義名分が見付かりにくい。義のために生きた兼続の生涯を描くドラマにおいて、どのように御館の乱を正当化するのかという点にも注目したい。

後半になると時代の動きを感じさせる展開になった。織田信長(吉川晃司)はますます凄みを出している。そして兼続は「信長という男を見てみたいのです」と信長への使者を申し出る。智将・兼続らしい好奇心である。無鉄砲にも見える兼続を「自分のできないことをやっている」と評価する景勝もいい。主従の強固な信頼関係を示している。

次回はいよいと兼続が信長と対面する。作品タイトルの「天地人」は事を成就するために必要な「天の時、地の利、人の和」を意味する。ドラマ内で天地人の意味を解説したのは信長であった。その意味で信長は兼続に大きな影響を与える存在になるのではないかと推測する。戦国時代劇的な展開になると思われる来週の放送が楽しみである。


(記者:林田 力)

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