法務省は二十九日、保護観察の一環として、刑務所を仮釈放された受刑者や少年院を仮退院した少年らを対象とする社会奉仕活動を取り入れる試案を公表した。凶悪事件以外で懲役刑などの執行を一部猶予する新制度の試案と併せ、法制審議会(法相の諮問機関)の部会に示した。
処遇の幅を広げることで、受刑者らの規範意識の向上を図り、再犯防止とともに刑務所の過剰収容緩和につなげたい考え。実現には受け皿となる地域社会の協力が不可欠だ。
法制審の議論、答申を経て、早ければ今秋の臨時国会に関連法案を提出する見通し。
試案によると、社会奉仕活動は、保護観察所か地方更生保護委員会のいずれかが必要に応じて保護観察の対象者に言い渡す。保護観察中の順守事項とし、強制力はないが、履行しない場合の仮釈放や仮退院などの取り消しも想定している。
奉仕活動について、法務省は公園をはじめとする公共施設の清掃や、老人ホームでの介護補助などを例示している。
法務省によると、二〇〇七年の一年間に保護観察を受けたのは四万二千人余り。
一方、刑の一部猶予は初犯の被告のほか、覚せい剤や大麻などの薬物を使用した被告が対象。判決は三年以下の懲役または禁固に限られる。
こうした被告は、例えば「懲役三年、うち一年は三年間執行猶予」の判決が確定すると、刑務所を二年で出所。その後の三年間に再び罪を犯さない限り、残る一年は刑務所に再び収容されることはない。
薬物使用者を対象としたのは、刑務所内だけでなく、誘惑のある社会の中で依存症を断ち切る処遇が必要とされるため。猶予期間中は必ず保護観察とし、カウンセリングや尿検査などを受けさせる方針だ。