麻生太郎首相は二十八日午後、衆院本会議で施政方針演説を行った。社会保障制度改革に向け「景気回復と政府の改革を進めた上で国民に必要な負担を求める」と明言。二〇一一年度までに必要な法整備を実施し、経済情勢を見極めた上で消費税率を引き上げる方針を表明した。経済政策では小泉政権以降の構造改革路線の転換を鮮明にし、環境や健康分野を柱とする新成長戦略などにより三年で百六十万人の雇用創出に取り組むとした。
国会は施政方針演説など政府四演説を受け、二十九日から衆参両院で代表質問を行う。政府、与党は〇九年度予算案の年度内成立に全力を挙げる方針。野党は消費増税問題や、官僚OBが再就職を繰り返す「渡り」問題などで首相を徹底追及する構えで、衆院解散・総選挙をにらんだ攻防が展開される。
麻生首相は、衆院選決戦を前に増税を掲げる異例の演説で「景気が回復するよう全力を尽くす」と強調。国の行政機関の定員純減や出先機関の統廃合など行政改革を進めるとして理解を求めた。
小泉改革に関しては「市場に委ねればすべてが良くなるというものではない」と指摘。「政府の重点を生活者の支援へ移す必要がある」と強調した。農業改革では、自給力向上のため「平成の農地改革」法案を今国会に提出すると表明。民主党を念頭に「国民が望んでいるのは対立ではなく、迅速に結論を出す政治だ」と協力を求めた。
外交・防衛分野では、オバマ米大統領とともに同盟関係をさらに強化すると宣言。金融危機への対応やテロとの戦い、核軍縮・不拡散、気候変動などで連携するとした。昨年九月の所信表明演説で触れなかった在日米軍再編については「地元の声に耳を傾けながら着実に取り組む」と述べた。
ソマリア沖の海賊被害対策では、新法制定に取り組む決意を表明。北朝鮮問題では、六カ国協議での非核化プロセスの前進や、すべての拉致被害者の早期帰国実現に向けた被害者調査の全面的やり直しを訴えた。
二十九日の衆院代表質問では、鳩山由紀夫幹事長とともに、民主党と統一会派を組む無所属の田中真紀子元外相が登壇。田中氏は北朝鮮による日本人拉致問題などで首相の指導力を問う方針。