2009年01月29日(木) 11時50分
「まだ使いにくいクラウドコンピューティング」と、Google社の噂の『GDrive』(WIRED VISION)
クラウドコンピューティングは素晴らしい利用環境を約束している。手持ちのガジェットを使って、自分のあらゆる情報にいつでもアクセスできる。自宅のデスクトップ機で利用するファイルや音楽とまったく同じものが、『iPhone』からも呼び出せる。外出時にノートパソコンを携行すれば、インターネットから自分のデータを引き出せる。そして、そのあなたの愛しいデータは、「クラウド」(cloud、雲)という地上ではないどこかにバックアップされ、災害からも本人の不注意からも守られ、安全が保たれる——。
だが、現状はこうした理想からほど遠い。「雲の上の生活」がまことしやかに語られるため、すでに実行可能なソリューションになっていると考える人がいても仕方ない。しかし、個人が所有するハードウェアとネットワークのハードウェア、双方に関係する大きな問題がいくつかあるのだ。それを以下で検証しよう。
最大の問題はユビキタス性だ。最も重要なファイルというのは、定義からして、常に身近にあるべきファイル、少なくとも、必要な時にはすぐ使えるファイルのことだ。しかし、インターネット接続がダウンしたらどうなるだろう? オフラインの状態でどうやって、『Google Docs』からスプレッドシートを取り出したり、電子メールに添付された地図を参照したりすればいいのだろう?
よくある話で説明すると、飛行機に乗っているときはネット接続が切断されてしまう(もっとも私は、機内のリラックスしたオフライン時間が大好きなのだが)。これは問題だが、実質的には、自宅やオフィスから離れている時はいつでも、接続は中断されているのだ。
3G通信のモデムを使えば良いって? 確かに小さなデータなら役に立つが、3G通信網は、音楽や写真、動画といった大容量ファイルを転送するにはまだ遅すぎる。それに、都市部から出て3Gのエリアから外れると、低速接続に頼るしかない。さらに、無防備なWi-Fi接続スポットを探す「ウォードライビング(日本語版記事)」は、プロが仕事でやることではない。
次に、ネットワークの問題が解決したと仮定して、その先を考えてみよう。バッテリーが丸一日持つネットブックがあり、高精細(HD)動画のストリーミングにも十分対応する高速なネット接続が、24時間週7日いつでも保証されているとしよう。さらにもう少し夢を広げて、接続料金は安価で、ばかげた帯域制限もないものとしよう。これだとうまく機能するだろうか?
可能性はある。だが、それでも大半の人は自分のデータを、「触れる」ことができる手元に置きたがるだろうと私は考える。クラウドはバックアップとしては便利だが、クラウドのデータが唯一のものになってしまうと、手元に自分のデータがないことが少々心配になってくるのだ。
さてここで、まもなくリリースされるとの噂がある米Google社の『GDrive』を検討してみよう。このアイディアは、ユーザーが自分の全データをGoogle社のサーバーにアップロードして、ハードディスク代わりに使うというもののようだが、そうだとすると、それは馬鹿げた話に思える。
よりあり得そうな話は、個人のコンピューターのハードディスクをGoogle社側にミラーリングして、ディスク内のデータに変更があれば、各種機器とウェブにシームレスに変更がコピーされるというシステムだ。これなら、どの機器でもデータは最新に保たれ、自分のマシンが手元にない場合でもインターネットカフェでファイルを入手できる。
非現実的な話に思えるって? だが、すでにこれを実行しているサービスが存在する。私は、『MacBook Pro』と「hackintosh」[PCをハックして『Mac OS』を実行できるようにしたマシン]を、『Dropbox』を使って部分的に同期させている。この同期ファイルはインターネット経由で『iPod touch』から入手可能だ。
問題は、無料版だと容量が2GBだけで、有料サービスにアップグレードしてもたった50GBしか利用できないという点だ。覚えているだろうか。『Gmail』以前、ウェブメールの保存容量は何MBという単位でカウントされていた。私の予想は、GDriveがウェブストレージで同じことをやるだろうというものだ。あなたの全データが、どこでも、いつでも。メール向けにIMAP(Internet Message Access Protocol)があるが、これがあらゆるデータ形式に拡張されたものを考えるといい。いずれ実現するだろうし、その時、モバイル機器が真に実用的になるはずだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090129-00000002-wvn-sci