2009年01月29日(木) 10時51分
【映画】警察の腐敗に迫る『ポチの告白』(ツカサネット新聞)
警察タブーに正面から切り込んだ大作映画『ポチの告白』が2009年1月24日に東京の新宿K's cinema(ケイズシネマ)でロードショーとなった。本作品は警察問題ジャーナリストの寺澤有氏がスーパーバイザー・原案協力・出演の3役をこなしている。この寺澤氏と大学の先輩後輩の関係にあたるのが記者の知人の御堂岡啓昭氏である。記者は御堂岡氏に誘われて公開初日の初回上映を鑑賞した。
本作品は真面目な警察官・竹田八生(菅田俊)が警察組織の中で悪徳に染まり、自滅するまでを描く。数々の警察犯罪を取材してきた寺澤氏が内容を提供しただけあって、警察の腐敗の実態はウンザリするほどである。しかも、恐ろしいのは警察犯罪を糾弾できない仕組みになっていることである。司法機関や報道機関までも抱き込んだ警察による恐怖支配の体制が描かれている。
本作品の登場する警察官は腐敗した悪人ばかりである。総務の女性職員さえ捜査協力費の虚偽請求に協力している。しかし、彼らが全て骨の髄まで悪人然としていないところが、かえって問題の根深さを感じさせる。本作品一番の悪徳警官は刑事課長(後に署長)の三枝(出光元)であるが、その彼でさえ好々爺然としたところがある。自らの責任回避を最優先とする小役人でしかない。陰謀話の後に趣味の釣り自慢をするなど、自らの悪事について真剣に自覚しているかさえ疑わしい。公務員失格であることは論を俟たないが、悪人としても無責任である。
それは主人公の竹田にも当てはまる。彼の告白は宣伝コピー「日本を震撼させる、衝撃のラスト6分」のとおり、とても迫力がある。しかし結局のところ、「警察官は上司の命令には従わなければならない」ということである。自分の行動によって被害を与えたことに対する内省の要素は乏しい。この無責任体質は政治家や行政、企業の不祥事にも共通する。
記者(=林田)は大手不動産から不利益事実(隣地建て替え)を説明されずにマンションを購入したために裁判で売買代金を取り戻した経験がある。このトラブルで記者が絶望したことは、一生に一度あるかないかの買い物で問題物件を騙し売りし、消費者の人生設計を狂わせかねない結果に対する大手不動産担当者の無関心さであった。大手不動産の体質を裁判で目の当たりにした記者は、このような会社の物件には住んでいられないという思いを強くした。
本作品は警察を批判するだけでなく、警察支配を許している日本人も批判している。ポチに甘んじる一般日本人と対照的な存在が草間(川本淳市)である。最初は「木鐸」と言う言葉も知らない無学のチンピラ風の彼が独学で勉強し、日本外国特派員協会で警察犯罪を告発するまでになる。
過去を水に流すことが日本人の習性とされるが、執念深く声を上げていかなければ状況は変わらない。これは記者自身が大手不動産のトラブルで声を上げた経験から実感をもって断言できることである。奇しくも草間は下の名前に因みリッキーと呼ばれ、記者の名前とも似ている。その意味でも竹間には大いに感情移入できた。多くの人が鑑賞し、日本社会について考えて欲しい映画である。
■ポチの告白
監督:高橋玄
出演:菅田俊/野村宏伸/川本淳市/井上晴美/井田國彦/出光元
公開:2009年1月24日
上映時間:195分
配給会社:アルゴ・ピクチャーズ
「ポチの告白」オフィシャルサイト www.pochi-movie.com
(記者:林田 力)
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