漫画家の楳図かずおさん(72)が東京都武蔵野市に建設した自宅をめぐり、周辺住民2人が「景観を破壊する」として、楳図さんのトレードマークの赤と白の横じま模様になった外壁の撤去などを求めた訴訟の判決が28日、東京地裁(畠山稔裁判長)であった。畠山裁判長は「周囲の目を引くが、景観の調和を乱すとまではいえない」として、請求を棄却した。判決後、楳図さんは代表作「まことちゃん」の決めポーズ「グワシ」を連発し、喜んだ。
「人任せではなく体感したかった」と出廷した楳図さんは、スーツに赤と白の横じまのネクタイ姿で現れた。法廷では背筋を伸ばしながら、判決文に聞き入った。
畠山裁判長が「法的規制や住民の取り決めはなく、さまざまな色彩の建物が建設されている。周囲の目を引くが、景観の調和を乱すとまではいえない」と原告側の請求を棄却。楳図さんは安どの表情を浮かべた。
法廷を出た楳図さんは、7階から1階へ降りようとエレベーターに乗ったが、中はすし詰め状態。3階に止まったときに外に押し出されると、エレベーターは閉鎖。1人取り残されてしまう一幕もあったが、その後は笑顔で会見した。
「人生の中の大きなドラマの一瞬。凝縮した時間だった。みなさんより、先に少し早く春を感じさせていただくことになりました」。何度も頭を下げ、感謝の言葉を述べた。「無理やりの仲良しではなく、間を置くのも仲良くする方法。気を配りながら生活したい」と近隣住民への配慮を明かしたまではよかったが、その後は暴走。「下手なんだよ」と言いながら、「グワシ」ポーズを連発。取り囲むカメラマンのリクエストに応え、クルクルとその場で回転しながら、歓喜の表情を見せた。
問題となった建物はJR吉祥寺駅近くの閑静な住宅街にある。外壁の横じまは約50センチ幅、屋根に設置された赤い煙突状の塔にある2つの丸い窓は作品の人気キャラクター「マチョメマン」の目をイメージしており、門には「グワシ」をかたどった鉄格子もあしらった。少年時代に、手塚治虫さんの作品に登場する海賊の服が赤と白だったことに影響を受け、ラッキーカラーに採用。私服のTシャツ、長野県八ケ岳の別荘もこの色を基調にしている。
住民側は2007年、建築工事の差し止めを求め、東京地裁に仮処分を申し立てたが、却下されたため提訴。自宅は昨年3月に完成しているため、外壁の撤去と、撤去するまでに毎月10万円の賠償金を求めていた。
◆原告の住民2人の話 楳図さんに話し合いをしてほしいとお願いしてきたが、応じてもらえないまま判決を迎えた。主張が認められず残念。内容を検討し、控訴するかどうか決めたい。
http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20090129-OHT1T00026.htm