【解説】政府はソマリア沖海賊被害対策として、新法を待たずに、自衛隊法に基づく海上警備行動で海自艦船などを初めて海外派遣する準備に入ったが、防衛省内部ですら「緊急避難的な脱法行為」(幹部)との指摘があり、将来に禍根を残しかねない。
海上警備行動は領海内の事案を想定している。政府は海外派遣について法的に問題ないとしているものの、制服組幹部は「強い違和感を感じる」と本音を漏らす。今回の拙速な対応は、政治による自衛隊の無原則な派遣を助長しかねない。
海上警備行動は、対象の船舶が領海外に出て、再び領海侵犯の恐れがないと判断された段階で解除されるのが通例だ。今回は海賊活動がなくなるまで派遣が続く可能性もあり、海上自衛隊では「いつ撤収できるのか分からない」と懸念する声が広がっている。
浜田靖一防衛相は麻生太郎首相から自衛隊派遣を検討するよう指示を受けた昨年末以来、海上警備行動発令に終始慎重な考えを示してきた。武器使用が正当防衛と緊急避難に限られ外国船を護衛できず、国際協調の面で問題があるとの認識からだ。政府、与野党は新法の是非も含めて議論を深める必要がある。