記事登録
2009年01月28日(水) 03時05分

旧東京三菱銀の元副頭取、地上げ資金融資に介在か読売新聞

 東京・渋谷の再開発をめぐる不動産会社「カーロ・ファクトリー」(東京都港区、現テールトゥシエル)の脱税事件で、2003年ごろ、東京三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)の当時の副頭取がカーロ社の元社長(48)からの依頼を受け、共同開発にあたった住宅販売会社(武蔵野市)への融資を担当支社に働きかけていたことがわかった。

 元社長は複数の民事訴訟で「暴力団幹部と近い」と認定されており、同銀行は融資の経緯に問題がなかったかどうか調査している。

 東京地検特捜部と東京国税局は27日、元社長らの法人税法違反容疑でカーロ社の関係先を捜索した。

 脱税疑惑の舞台になった渋谷区南平台町の土地は登記簿上は、住宅販売会社が03年〜06年に取得し、大手不動産会社に転売した形になっている。

 しかし、複数の関係者によると、住宅販売会社は銀行からの融資の受け皿として元社長に共同開発を持ちかけられたもので、実際の地上げや転売の交渉はカーロ社が担当していた。土地の転売益百数十億円の分配が問題になった際にも、元社長は住宅販売会社に「そちらは名義だけだ」と言い張って、6割近くを自分の取り分にしていたという。

 東京三菱銀行はこの開発への融資に中心的に関与。住宅販売会社への総額約216億円の融資は、3銀行とノンバンク2社がシンジケート団を組んで実行、うち同銀行グループが九十数億円を占めている。融資は住宅販売会社からカーロ社に流れて地上げ用資金に使われたが、元社長と組んで地上げにあたった不動産業者は「驚くほど資金が潤沢だった。東京三菱の融資がなければ、地上げは成功しなかった」と話している。

 同銀行の融資は、カーロ社元社長が当時の副頭取に依頼した。元副頭取が担当支社に融資話をつないだほか、同銀行では、地上げの対象だったビルを持つ外資系システム開発会社の幹部も、カーロ社に紹介していた。元社長は共通の知人だった相撲部屋の親方から元副頭取に引き合わされたといい、「頻繁に食事をする仲だ」などと吹聴していた。

 元社長は過去の地上げで暴力団関係者と協力したこともあったほか、関与した取引を巡る複数の民事訴訟の判決で、「暴力団幹部と近い」と認定されている。このため、三菱東京UFJ銀行では住宅販売会社への融資が、反社会的勢力への便宜供与にあたらないかどうか調べている。

 現在は系列証券会社会長に就いている元副頭取は読売新聞の取材に、「担当支社に『(元社長の)話を聞いてやれ』とは言った」として働きかけを認めたものの、「どういう素性か調べるように指示したが、関係機関から反社会的勢力との指摘はなかった」としている。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090127-OYT1T01196.htm?from=top