雇用状況の悪化が、ブラジル人などの外国人労働者の生活に深刻な影響を及ぼしている。求人の減少に加え、「言葉の壁」が再就職を一層困難にしているためだ。学費を工面できず、子供が学校退学を余儀なくされる事例も相次いでいる。
■栃木・真岡栃木県真岡市のハローワーク真岡。連日のように始業時の午前8時半には長い列ができる。4人に1人は、ブラジル、ペルー、インドネシア人などだ。外国人の新規求職登録者は、昨年10、11月が20人程度だったが、12月は52人、今月は21日までに176人と急増。横須賀幹夫所長は「求人が少ない中、日本語ができない外国人はなおさら厳しい」と表情を曇らせる。
「家賃や生活費を稼がなくては。何でもいいから仕事をしたい」。23日にハローワークを訪れた真岡市在住の日系ブラジル人、オガサワラ・ミッシェルさん(29)は自動車部品工場の派遣社員だったが、昨年12月末に仕事を失った。生活費に月約27万円は必要といい、少しでも負担を軽くするため、妻(26)と子供2人を近くブラジルに帰す予定だ。
■群馬・太田群馬県太田市のハローワーク太田に設置された「外国人雇用サポート室」にも連日、数十人の日系ブラジル人らが殺到している。16日に訪れた同県大泉町の日系ブラジル人、ヨコオ・ヒデキさん(60)は、1年半勤めた派遣先を先月で解雇された。母国で大学に通う娘の学費を工面しなければならず、「仕事はあっても月給12万円程度。アパートの家賃と光熱費で大半が消える。これならブラジルに帰った方がいい」とため息をついた。
■浜松約1万9000人のブラジル人が外国人登録する浜松市。ハローワーク浜松の先月の外国人の新規求職者は490人で、前年同期の約10倍になった。
妻(29)、幼稚園に通う長女(4)と、県営住宅で暮らすコギソ・ロベリオ・タカシさん(29)は先月、自動車部品工場の仕事を失った。今月10日に最後の給料約20万円を受け取った。家賃2万3500円、自動車のローン2万2000円、娘の幼稚園の授業料2万3000円……。「来月はお金がない。子供に幼稚園を辞めさせなくてはならない」
浜松市のブラジル人の子供の多くは公立学校ではなく、私塾の外国人学校で母国語の教育を受けている。市内のブラジル人学校の代表は、「生徒の半数が昨秋以降退学したか、退学せざるを得ない状況」と明かす。
愛知、三重、静岡県でブラジル人学校計5校を経営する「EAS」(エスコーラ・アレグリーア・ジ・サベール)によると、トヨタ自動車のおひざ元の愛知県豊田市の校舎では昨年11月以降、100人以上が退学し生徒数が半減。多くは、親の失職で授業料が払えなくなったり、授業料を帰国費用に充てたりしたためだ。
■厚労省言葉の壁が外国人労働者の再就職を阻む要因となっていることから、厚生労働省は新年度から、外国人労働者が多い群馬、静岡、愛知県などで、失業者を対象に日本語研修の実施を検討している。国際交流団体などに委託し、労働法令の知識も学んでもらう計画だ。「ラインが相手の製造業以外の仕事にも就いてもらえるよう支援したい」(同省外国人雇用対策課)としている。