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2009年01月28日(水) 16時00分

円高は本当にデメリットばかりなのか メディアには報道されない「円高のメリット」とはMONEYzine

「円高が日本企業にダメージを与えている」など、円高に対して悲観的な報道が続いているが、本当に円高はデメリットばかりなのだろうか。

 たしかに円高は急速に進んでいる。東京外為市場のドル・円は2年前の2007年1月は120円超、1年前の08年1月でも110円程度だったが、米国経済の悪化とともに急速に円高が進み、08年3月には1ドル=100円を突破。日米の金融当局はドル全面安への懸念を強めたが、その後世界金融不安が本格化し、12月17日には一時95年7月以来の円高ドル安水準となる1ドル=87円13銭をつけた。28日現在では、1ドル=89円付近で推移している。

 たとえば輸出企業であるトヨタの場合、1円の円高ドル安が進むことで年間の営業利益が350億円減少するともいわれており、海外進出を行っている国内の大手企業にとってドル・円の推移は死活問題となっている。円高にはこうした輸出企業へのデメリットばかりが注目されるが、実際には日本のGDPに対する輸出依存度は16〜17%程度で、近年上昇傾向にあるものの先進国の中では米国に次ぐ低い水準だ。

 一方、円高によってもたらされる恩恵も少なからず存在する。資源のない日本にとっては円高は歓迎すべき面も多く、製造業を営む企業は原材料を海外から安く手に入れることが可能になる。とくに鉄鋼や紙・パルプ、石油会社、電力会社など、輸入・国内消費型企業(内需型)にとっては有利だ。これらの企業の業績が上向けば投資家が株式を買う動機につながるし、円高は円の価値が上がることなので日本の貨幣的信用が高まり、金融資本市場で円建ての株式や債券などの金融商品が買われやすくなる。

 さらに国民にとっても資産のほとんどを日本円で所有していることから、その価値が1.3〜1.4倍に増えることはメリットだ。昨年末からスーパーやデパートでは輸入品の「円高還元セール」が行われているが、一部製品や輸入品は安くなり、海外旅行先でも買い物がたくさんできるようになる。

 こうしたメリットがあるにもかかわらず円高が深刻な問題になっているのはその「スピード」だ。あまりにも急速に円高が進行しているために、多くの輸出企業が円高を吸収したり、レバレッジを行うことでリスクを軽減することができず業績を落としている。業績が悪化した企業は雇用に慎重になるので、それが不景気につながり信用収縮を加速させている現実がある。日本政府は10%の円高が1年続くとGDPは0.26%押し下げられるという試算を出しており、それだけに今後一層の円高が進む場合には、日本銀行の介入や国内の通貨価値をコントロールする金融政策が政府に求められる。

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