東京・渋谷の再開発を巡り、法人税約18億円を脱税した疑いが浮上している不動産会社「カーロ・ファクトリー」(東京都港区、現テールトゥシエル)は、地上げした後のビルに居座って、ビジネスパートナーだった武蔵野市の住宅販売会社に報酬増額を迫っていたことが関係者の話でわかった。
この結果、地上げの報酬は当初契約した転売益の約4割から約6割に跳ね上がった。東京地検特捜部は、カーロ社の元社長(48)が住宅販売会社を手玉にとってつり上げた報酬を隠していたとみており、元社長らを法人税法違反容疑で取り調べる。
取引に関与した複数の関係者によると、元社長は1990年ごろから都心部などでの地上げを手がけるようになり、暴力団幹部と協力することもあったという。
住宅販売会社に「土地を転売すればもうかる」などと問題の土地の再開発話を持ちかけた2003年ごろは、ミニバブルで都心の一等地が値上がりしていた。土地は渋谷駅から徒歩10分以内の一等地。両社は地上げが完了して土地の転売ができれば、転売益の約4割をカーロ社の報酬にすることで合意、契約書を交わしたという。
再開発の規模は当初はマンションなどが建つ1500平方メートル前後の予定だったが、「広く地上げした方が高く転売できる」との元社長の助言で、徐々に範囲が拡大。住宅販売会社は05年までの2年間で、隣接する外資系システム開発会社の本社ビルを含む約7000平方メートルを取得した。
ところが、土地を大手不動産会社に約422億円で転売する計画がまとまりかけると、それまで友好的だった元社長の態度は一変。カーロ社側は地上げしたビルの一つに居座ったうえ、転売益の取り分を上げるよう要求してきたという。
占有を続けられると、大手不動産会社への転売話が白紙に戻るおそれもあったため、住宅販売会社側は増額要求をのまざるを得なくなった。最終的に転売で手にした利益百数十億円の約6割に当たる約80億円をカーロ社に業務委託手数料として支払った。
さらに、元社長は、住宅販売会社が横浜駅西口に所有していた商業地を割安で売るよう要求。同社は土地を手放したくなかったが、「渋谷でもうかったんだから、10億ぐらい損してもいいだろう。そんなことじゃ立ち退かないぞ」などと言われ、結局、取得時よりも10億円近く安い価格で元社長が実質的に経営する別の会社に売却する契約を結んだという。この二つの取引が済むと、元社長側は占有していたビルの鍵を置いて、立ち退いた。
元社長は業務委託手数料として得た収入を、別に経営していた赤字会社「ル・マン商会」(港区)への架空発注で圧縮するなどし、法人税約18億円を免れた疑いが持たれている。横浜駅西口の土地は現在も関連会社名義で保有している。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090127-OYT1T00615.htm?from=main2