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2009年01月27日(火) 08時05分

ネットいじめなくなった 大田区の中学、授業で「携帯」徹底論議産経新聞

 ■生徒の声パンフに、関係者注目

 携帯サイトなどによる「ネットいじめ」の被害が深刻化する中、生徒自身に携帯電話との“付き合い方”を考えさせる授業に取り組んでいる中学教諭がいる。「携帯電話は本当に必要か」。生徒にこうした疑問を徹底的に話し合わせたところ、授業を受けた学年ではネットいじめがなくなったといい、授業について教育関係者からの問い合わせが相次いでいる。

  ・写真 : 埼玉県教委が作成した「ネットいじめ」対応マニュアルで、プロフを紹介した部分

 東京都大田区立大森第三中学の大山圭湖教諭(53)は3年前、当時担任をしていた2年生で、授業中にぼんやりしている生徒が増えていると感じた。前年に行った携帯電話に関するアンケートを改めて行うと6割近い生徒が携帯を持ち、毎日1〜2時間も友達とメールをするという実態が浮かんだ。中には1日6時間もしている生徒や、掲示板の管理人をしていた生徒も。

 生徒の声はもっと切実だった。「携帯がなくなるとどうなるか」との問いに、「本音が言えなくなる」「死ぬか精神がおかしくなる」「世界が終わる」…。「生徒たちも『携帯に依存しているなんて、何かおかしい』と感じていた。だからこそ、その思いをみんなに伝えてもらうことにした」と大山教諭。

 授業で行ったパネルディスカッションでは、10人の生徒に同級生や保護者の前で自分の思いを語ってもらった。しかし、それでも思いが伝わらないと感じた生徒らは自らの体験や思いをつづったパンフレット「中学生の中学生による中学生のための携帯ネット入門」を作成した。

 携帯を持っていない生徒は「意識して携帯依存から抜け出して」と呼びかけた。「携帯でないと言えない本音なんてない。本音は直接話してこそ伝わる」と訴える声もあった。一日中メールにはまったという生徒は「終えた後、時間の経過に驚き、後悔した」との思いをつづった。

 パンフレットは学年全員に配布。大山教諭は「自分たちで考えたことで、子供たちは自分たちなりの携帯電話との付き合い方を見つけたようだ。少なくとも、この学年ではネットいじめはなくなった」と話す。

 昨年7月、新たに担任となった1年生対象のスピーチ会でも、携帯メールに悩む声があった。大山教諭は「家庭でもしっかり教育しているが、それでも子供は携帯にはまってしまう。しつこいようでも毎年繰り返し教えることが大切」。この学年でもパンフレット作成を考えている。

 小中学校への携帯電話持ち込みの議論が広まる中、教育関係者からパンフレットへの問い合わせも増えている。今月31日に開かれる教育イベントでもパネリストとして生徒と一緒に参加する。「せっかくの生徒たちの声を多くの人に役立ててもらいたい」

 大森第三中でも携帯電話の校内への持ち込みは禁止だ。大山教諭は「学校で必要だとは思わない。ただ頭ごなしに『ダメ』といっても子供は反発するだけ。自分たちで考えさせることが必要」と話す。

                   ◇

 ≪携帯電話をめぐる行政の対応≫

 平成【19年】

 12月 政府の教育再生会議、第3次報告で子供の携帯電話

     へのフィルタリング(閲覧制限)義務付けを求める

   【20年】

  5月 政府の教育再生懇談会、小中学生の所持禁止を盛り

     込んだ第1次報告まとめる

  6月 携帯電話会社に、18歳未満へのフィルタリングサ

     ービス提供を義務付ける有害サイト規制法が成立

  7月 文科省、携帯電話の学校持ち込みについてのルール

     作りを各教委に通知

 11月 文科省、ネットいじめ約5900件と平成19年度

     の全国調査結果を公表。教員向けのネットいじめ対

     策マニュアルを作成

 12月 大阪府の橋下徹知事、小中学校への携帯電話持ち込

     み禁止を表明。政府の教育再生懇談会、「学校への

     持ち込み禁止」提言案をまとめる

   【21年】

  1月 埼玉県、ネットいじめの対応マニュアルを公表。文

     科省、学校持ち込み禁止の方針固める

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090127-00000037-san-soci