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2009年01月27日(火) 00時22分

<定額給付金>「政治の放棄」「早く実施を」…識者ら両論毎日新聞

 2兆円の定額給付金を盛り込んだ08年度第2次補正予算案を巡る与野党の攻防は、26日の両院協議会でピークを迎えたが、憲法の衆院優先規定により成立は確実だ。国民の多くが給付金に反対する中、国会での残された議論の機会はもう多くはない。「ばらまき」か「消費刺激策」か。各方面の識者らに改めて意見を聞いた。【篠原成行】

 ▽中島岳志・北海道大准教授(33)=アジア研究

 政治とは「小さな税を集めて公共のために大きく使う」こと。給付金は税の再分配で「政治の放棄」だ。2兆円は雇用対策に使うべきだ。「小学校校舎の耐震化」など必要な公共工事を前倒しすれば、非正規労働者の雇用拡大にもつながる。政府への信頼が失われた現状では、国民は予想通りには動かず、消費刺激にはつながらないだろう。

 ▽室井佑月さん(38)=作家

 そもそも「給付」という言葉が「金をやるからありがたいと思え」という感じがして嫌らしい。8歳の息子は「僕に給付されるのだから好きな物を買う」と言っているが、消費刺激が目的というなら「誕生日まで我慢しなさい」と息子に言えない。私は「さもしい」と言われようが受け取る。「ろくなことに使わないんだから税金を返せ」という気持ちだ。

 ▽藤本一美・専修大教授(64)=アメリカ政治学

 私が住んでいた米ネブラスカ州も給付金を配ったが、高額所得者が少なく歓迎する声がほとんどだった。日本でも雇用を打ち切られた人や低所得者は生活費が必要で、一日でも早く実施すべきだ。寒い時に暖かいものが買える。所得制限を設けると給付時期が遅れるので、全世帯に配ればいい。

 ▽なだいなださん(79)=作家、バーチャル政党「老人党」提案者

 ばらまき以外のなにものでもない。2兆円は低所得者対策や健康保険がない子供たちなどの福祉政策に使うべきだ。福祉・医療現場には医師不足、妊婦の受け入れ不能など他の問題も山積している。給付金で経済効果が望めるのかどうか、議員は学者のレクチャーを受けるといい。老人は年金生活者がほとんどだが、自分のことばかり考えているわけではない。

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