東京・渋谷の再開発を巡り、地上げの委託手数料として得た所得約60億円を隠し、法人税約18億円を脱税した疑いが強まったとして、東京地検特捜部は近く、不動産会社「カーロ・ファクトリー」(港区、現テールトゥシエル)と同社の元社長(48)について、法人税法違反容疑で本格捜査に乗り出す方針を固めた。
特捜部は都心の一等地の地上げに絡む大型脱税事件の全容解明を目指す。
地上げが行われたのは、渋谷区南平台町の国道246号線沿いにある約7000平方メートルの土地。取引にかかわった複数の関係者によると、元社長は2003年ごろ、武蔵野市の住宅販売会社に再開発話を持ちかけた。現地には当時、外資系システム開発会社の本社やマンション、雑居ビルなどが立ち並んでいたが、元社長が住宅販売会社の委託を受ける形で、立ち退き交渉を行った。地上げ資金計約216億円は、東京三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)などが住宅販売会社を経由する形で融資した。
地上げは05年に終わり、住宅販売会社は06年春、土地を約422億円で大手不動産会社に売却。その際、カーロ社は、住宅販売会社から手数料として約80億円を受け取ったが、元社長はこれらの収入を、別に経営していた赤字会社「ル・マン商会」(港区)への架空発注で圧縮したり、代表役員になっていた宗教法人「大和教会」(岐阜県大野町)の収入だったように装ったりして、法人税を免れた疑いが持たれている。元社長は隠した所得を別の不動産売買の投資に充てるなどしていたとみられる。
脱税の舞台となった土地は、購入した大手不動産会社がイベントホールなどをそなえた商業ビル(地上22階、地下2階建て)の建設を進めている。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090127-OYT1T00147.htm?from=top