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2009年01月27日(火) 00時00分

自立支援の体制整備を読売新聞

 「何が地雷か、分からないことが怖かった」。多摩地区に住む会社員の女性(45)は、5年前に終えた1年間の結婚生活をこう振り返る。人当たりがよく、周りからは「こんなにいい人はいない」と言われた元夫の“地雷”を踏むと、元夫は急変した。

 結婚して間もない頃、出かけた先で突然置き去りにされた。会話の中で気に障ることがあったと、後から聞いた。結婚して3か月が過ぎた頃、初めて暴力をふるわれた。以後、一方的に責められる回数が増えた。

 一緒に参加するはずだったイベントに理由もなく「行くな」と命令され、体調が悪くて会社を休もうとすると「会社に迷惑をかけるな」とどなられた。友人の男性について「感じがいい」とほめると、「その男のことが好きなんだろう」と追及された。

 感情を爆発させた後、元夫は必ず、怒った理由を長々と説明し出した。「自分のせいなんだ」。そう思うしかなかった。

 人生をやり直す決心がつかなかったからだ。貯金は結婚して新しい生活を送るための準備金などに充て、底をついていた。何より短期間に引っ越しをし、再び生活環境が変わることに抵抗があった。

 しかし、元夫の身勝手な思いこみに耐えきれず、「私のいうことを信じてくれない人とは、やっていけない」と離婚を決意した。会社勤めをしていたが、まとまったお金がなかったため、親に借りなければならなかった。

 加害者の元を飛び出せば、住居や生活費がすかさず必要になる。都は、被害者を一時保護する施設を設けている。無料で利用できるが、利用期間はおおむね2週間と短い。都によると、2007年度の一時保護件数は542件。一部の区市町村も一時保護をしており、その数は219件。

 支援者によると、多摩地区には現在、民間が運営するシェルター(緊急避難所)が四つある。多摩地区で約10年前にできた「けやき」は、マンションの1室を利用している。料金は1泊500円。利用期間は原則1か月となっている。

 けやき運営委員会の高橋久美子代表(74)は「2週間で家や仕事を見つけ、経済的に自立することはとても無理」と述べ、相談所での利用期間の延長や、引っ越し費用の補助などの必要性を指摘している。

 都が08年度に面談した被害女性165人を対象にしたアンケートによると、被害者の75%が子育て世代。無職が59%、パート・アルバイトが22%と、生活基盤の弱い現状が浮き彫りになっている。

 女性は「周りのDVへの理解と、すぐに生活を立て直すための支援があれば、再出発する決意ができる人は多いはず」と訴える。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyotama/feature/hachioji1232983186089_02/news/20090127-OYT8T00047.htm