景気の悪化により、トヨタ自動車など製造業が減産を進める中で、障害者が通う愛知県内の共同作業所でも、請け負っている仕事の量が減ったり、単価が下げられたりする影響が出始めている。障害者年金で暮らす通所者にとって、作業所で得る給与は貴重で、障害者や施設職員の間には先行きへの不安が広がっている。(小山内晃)
知的障害者や自閉症の人ら約40人が通う愛知県小牧市の「すずかけ共同作業所」では、20歳〜50歳代の男女20人ほどが、段ボールを折り返して三角形の緩衝材を組み立てていた。緩衝材は、下請け業者や自動車部品会社がトヨタに納入する窓ガラスを梱包(こんぽう)する。自分たちが作った緩衝材が、トヨタ車に使われているのは通所者にとって誇りでもある。
作業所ではこれまでは1日当たり1200〜1000個の緩衝材を作ってきたが、昨年11月中旬以降は700〜600程度と半減した。さらに、年明けからは、1個当たりの単価が16円から10円に引き下げられた。
この影響で、これまで多い月で40万円ほどあった作業による全体の収入は、12月は25万円に激減。今月はさらに減る見通しだ。多い人で月1万8000円だった通所者の給与も、今後はカットせざるを得ない状況となっている。
障害者自立支援法が2006年4月に施行され、障害者が福祉サービスを利用する際には原則1割が自己負担となった。月額8〜6万円の障害者年金で暮らす人にとって給料の占める割合は大きく、給与のカットは痛手だ。作業所では当面の間、蓄えから従来の給与額を支払う予定だが、それも2、3か月程度しか続かないという。
作業所に約20年通っている吉川光男さん(56)は「自動車業界が大変なことは分かるけれど、仕事が少なくなり給料が減るのは困る」と不安そう。指導員の光岡秀昌さん(44)は「作業所は収益が目的ではないとはいえ、通所者は『自分たちが役立っている』とやりがいを持って作業に取り組む人ばかり」と話す。
同作業所など約100団体が登録する「きょうされん愛知支部」(名古屋市熱田区)によると、景気が悪化した昨秋以降、車部品などを中心に、多くの作業所で下請けの量が減っている。
同県瀬戸市の「アニモの家」では、遮音材の組み立て作業が11月いっぱいで打ち切りとなった。担当者は「部品以外の仕事も、以前の半分程度に減っており、通所者への工賃の支払いは苦しくなっている」と打ち明ける。同支部の大野健志事務局長は、「作業は金銭面だけでなく、障害者にとっては生きがいにもつながっており、現状は非常に厳しい」と苦しい胸中を隠さなかった。