2009年01月27日(火) 11時50分
「命綱のトンネル網」ガザで再開:武器やヤギを運ぶ世界をギャラリーで(WIRED VISION)
エルサレム発——ガザ侵攻の間、イスラエル軍は数百のトンネルを空爆した。イスラム過激派グループ『ハマス』の武器密輸入ルートとなっていたこれらのトンネルを封鎖し、ハマスにこれ以上物資を調達させないようエジプトに圧力をかけるためだ。
だが、停戦のわずか数日後、ハマスの指揮の下、これらのトンネルが稼働を再開した。
「ハマスは、ガザ南部にあるフィラデルフィア・ルートの地下を走る密輸トンネルをすべて掌握しており、1月18日(現地時間)に『Operation Cast Lead』(鋳られた鉛作戦)が終結してから、追加の武器をガザ地区に運び込んでいる」と『Jerusalem Post』紙は報じている。
[フィラデルフィア・ルートとは、エジプトとガザ地区の間にある、全長およそ20kmの道路。エジプトとガザ地区を結ぶラファ検問所があり、ガザ地区に武器を入れないよう、イスラエルとエジプトの監視下にある。パレスチナ武装組織は、これに対抗し武器をガザに入れるため、フィラデルフィア・ルート各地の地下にトンネルを掘っている]
これらの通路は、「多くの場合、地域のパレスチナ人の氏族たちによって運営されている。ハマスがこれらのトンネルを支配すると決定したのは、彼らがガザにおいて勢力を立て直そうという試みの一環だと考えられている。ハマスは現在、ガザ地区に密輸される物資を決定することが可能で、武器や爆弾を優先的に運び込んでいる」という。
ここで疑問が出てくる。エジプトは自国の国境側から密輸入を阻止しようとはしないのだろうか? カイロにいるイスラエルの外交団は、そのことを主張しようとしている。エジプト国境の軍を2倍、あるいは3倍にも増強することについて話し合いも行なわれている。だが、この地域の武力政策を長い間観察してきたジャーナリストのKhaled Abu Toameh氏によると、実質的な変化は起こりそうにないという。
Toameh氏は、[イスラエルが抱える歴史的および現在の問題を伝える教育機関]『Project Interchange』が主催した複数のミーティングの1つにおいて、ワイアードの軍事ブログ『Danger Room』に次のように述べた。
「われわれは振り出しに戻った。(エジプトのホスニー・)ムバーラク大統領にとっては、ユダヤ人たちを殺すこれらの兵器のために[今のままの方が]都合がいいのだ。そうでなかったら、シナイ半島あるいはカイロでトンネルを封鎖できるはずだ」
ガザ地区にある、封鎖されたエジプトとの国境の地下に、トンネルが作られたのは数十年前のことだ。やがてこれらのトンネルは、ガザ地区の人々およびシナイ半島のベドウィン(アラブ遊牧民)たちの経済における大きな経路(日本語版記事)となった。
[リンクされている記事によると、これらのトンネルは、イスラエルに事実上封鎖されているガザにとっての「経済的な生命線」にまでなっており、家畜や建設資材から、勃起不全治療薬『バイアグラ』や密輸品の『iPod』にいたるまで、あらゆる物資が運ばれているという。ガザでは食糧や燃料などが恒常的に不足しており、2008年の報告によれば、人口150万人のうち8割が食糧援助に依存している。2008年1月には、検問所近くの壁が爆破され、ガザ住民がエジプト側に流入して物品を購入する事態も起きている]
エジプトの役人たちがトンネルの往来に対して見て見ぬふりをしているのにはさまざまな理由があると考えられている。例えば、国境の役人たちが金を得られる。エジプト国内のイスラム過激派グループの手に武器が渡らないようにする。また、表向きには反ハマスの姿勢を維持しつつも、エジプトがパレスチナ人過激派グループを支持していることを示す、などだ。
2008年末に開始されたガザ侵攻・ハマス攻撃の背後にあるイスラエルの目論みの一部は、エジプト人たちの姿勢を変えることだった。つまり、ハマスと彼らの密輸ルートがエジプトにとっていかに脅威的であるかを示し、ガザ地区の難民たちがシナイ半島に流出する可能性があるとの巧妙な警告を送るというものだった。「そのことによって、エジプト人たちは問題に関与せざるを得なくなる」と、イスラエルの軍高官だったある人物は述べる。
だが、ガザ地区における軍事行動がエジプトの姿勢をどのように具体的に変化させたのか、と尋ねられると、この人物は肩をすくめ、自分にも「分からない」と語った。
(2)では、イスラエルの人道的団体『B'Tselem』が、『Danger Room』に提供してくれた地下トンネルの画像をいくつか紹介する。
(2)へ続く
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090127-00000004-wvn-sci