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2009年01月27日(火) 00時09分

【神隠し公判】裁判員制度を意識し判例提示 死刑選択はあるか?産経新聞

 東京都江東区のマンションで会社員の東城瑠理香さん=当時(23)=が殺害されバラバラにされた事件で、殺人罪などに問われた2室隣の星島貴徳被告(34)の論告求刑公判が26日、東京地裁(平出喜一裁判長)で開かれ、検察側は死刑を求刑。弁護側は無期懲役を求めて結審した。裁判員制度を前に、裁判所の判断が注目される。

 「検察官は視覚に訴える立証活動を行い、成功しているように思われる」「(星島被告は)『市中引き回し』に等しい扱いだった」…。弁護側は最終弁論で、検察側の立証手法について異例の指摘をした。生々しい肉片の写真や、遺体切断時の再現画像を大型モニターに映し出し、犯行状況を詳細に確認した被告人質問を指したものだ。

 裁判員制度をにらみ、検察側は「動機に酌量の余地があるでしょうか。いいえ、いかなる意味においても全くありません」と反語調で語りかけるように論告、「死刑。死刑に処すことを求めます」と「死刑」を繰り返して求刑した。

 検察側は、被害者が1人でも死刑判決が確定した過去の類似事件を例示した。(1)16歳の女子高生を拉致監禁、乱暴して絞殺し、遺体を山中に放置した「前橋事件」(2)7歳女児を誘拐、わいせつ行為をして溺死させ、遺体の歯をえぐり遺棄した「奈良事件」(3)19歳の女子短大生を監禁し、乱暴した後に焼き殺した「三島事件」−の3事件だ。

 さらに、「光市母子殺害事件」で広島高裁の無期懲役判決を差し戻した最高裁判決にも言及。「酌量すべき事情がない限り、死刑を回避できないとの基準が示された」と解説した。

 プロの裁判官には「釈迦に説法」の過去の判決をあえて説明した背景には、(1)死刑判決を求める検察側の強い意思を示す(2)裁判員裁判で“素人”が量刑を判断する際の基準を示す−との事情があったとみられる。

 国民の関心が高く、裁判員裁判の「モデル」と位置づけられている今回の公判。判決は求刑通り死刑となるのか、「死刑基準は被害者の人数によっても判断されている」と無期懲役を求める弁護側の訴えをくむのか、裁判所の判断が注目される。(小田博士)

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