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2009年01月27日(火) 22時33分

<野村HD>新たな損失次々、積極投資裏目に 巨額赤字計上毎日新聞

 野村ホールディングス(HD)が27日発表した08年4〜12月期連結決算(米国会計基準)で、4923億円の巨額赤字を計上したことは、金融危機で受けた深刻なダメージを改めて浮き彫りにした。米証券大手リーマン・ブラザーズの欧州、アジアの両部門買収では人件費などの負担が重くのしかかった。野村HDはV字回復を目指すが、苦境から抜け出す出口は見えていない。【瀬尾忠義、野原大輔】

 「金融危機に直撃して業績が悪化した。09年3月期も非常に厳しいと認識している」。野村HDの仲田正史・財務統括責任者(CFO)は、27日の決算記者会見の席上、沈痛な表情を浮かべた。欧米金融機関の損失が膨らみ、金融不安が再燃しつつあり、業績回復は容易ではない。

 野村はこの1年、巨額の赤字を計上し続けてきた。米国の低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題が直撃した08年3月期の最終(当期)損益は678億円の赤字となり、9年ぶりの赤字転落。08年4〜6月期では、取引先の米金融保証保険会社(モノライン)への引当金の積み増しがかさんで、765億円の最終赤字を計上。08年9月中間決算の赤字は1494億円に膨らんだ。

 野村は、決算発表の度に「損失処理のためにできることはすべてやった」(仲田CFO)と強調してきた。しかし、野村の処理を上回るスピードで市場が悪化し、「損失の打ち止めが見えない」(証券アナリスト)状況に陥った。

 昨年9月のリーマン・ブラザーズ破綻(はたん)後の混乱で、08年10〜12月期はさらに赤字幅が拡大した。株式や債券の運用損失だけで1470億円に上り、安定的な収益源だった個人向け株式売買の手数料収入なども軒並み悪化。出資先の運用会社の株価下落に伴う損失も623億円を計上した。また、アイスランド関連の投資や詐欺事件に絡んだ投資の損失も計上するなど、高収益を狙った海外投資も裏目に出た格好だ。市場の悪化が続けば、「V時回復のカギ」となるリーマンの買収効果が表れず、09年3月期決算で5000億円規模の赤字に陥る可能性がある。

 仲田CFOは、「さらなる人員削減について業務を見直す過程で具体的に進めたい」と述べ、一段の人員削減に踏み切る可能性にも言及した。

 ◇戦略練り直しも くすぶる銀行との提携話

 リーマン・ブラザーズが経営破綻し、ゴールドマン・サックス(GS)とモルガン・スタンレーが、再建を図るために証券会社から金融持ち株会社に業務転換したことで、独立系証券は野村HDだけとなった。野村HDは、リーマンの欧州、アジア部門の買収で海外事業を強化し、世界市場に攻勢を仕掛ける戦略だが、市場の動揺は収まらず、成果を得られるかは未知数だ。

 米証券大手5社は、M&A(企業の合併・買収)の助言業務など投資銀行業務で収益を伸ばしてきたが、金融危機でそのビジネスモデルが崩れ、経営悪化に陥った。GSとモルガン以外でも、メリルリンチはバンク・オブ・アメリカに、ベア・スターンズはJPモルガン・チェースに、それぞれ買収された。

 野村HDは、欧米金融機関が深い傷を負った今、勢力拡大の好機ととらえる。リーマン買収で国境を越えたM&A案件が急増。実際、今月には航空持ち株会社エールフランス−KLMのアドバイザーになり、破綻したイタリアのアリタリア航空の株式買収を成功させた。野村HD社内では「リーマン買収の効果」(幹部)と評判になった。

 ただ、野村HDの戦略も盤石とは言い難い。「欧米でもともと野村のブランド力は弱い」(元リーマン社員)という事情のほか、多額の資金を必要とする投資銀行業務を支える銀行が傘下にないからだ。野村HDは「銀行業務に手を出すつもりはない」(渡部賢一社長)というが、傘下に大手銀行を置かない経営体系が「野村HDの弱み」(大手証券)に映る。このため、野村HDが大手金融機関と提携するとの観測は根強く、次の戦略が早くも注目されている。

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