2009年01月27日(火) 19時40分
調書漏洩事件判詳報:週刊現代元編集長と被告人に尋問(産経新聞)
医師宅放火殺人の調書漏洩事件で、奈良地裁で27日開かれた第6回公判の主なやりとりは次の通り。
《まず講談社の加藤晴之学芸局次長の証人尋問を実施。「僕はパパを殺すことに決めた」の出版前、著者の草薙厚子さんが週刊現代に放火殺人事件の記事を執筆した当時の編集長だった。講談社が公表した第三者調査委員会の報告書によると、社内でただ1人、「僕パパ」の出版に反対したとされる》
弁護人「『僕パパ』の出版に反対したのか」
元編集長「はい。出版前にゲラ刷りを読んで、国民の知る権利と人権への配慮とのバランスを欠いていることが気がかりだった。出版に公益性はないと思った」
弁護人「被告の逮捕・起訴という事態を招いたことはどう考えるか」
元編集長「(涙で声を詰まらせ)講談社の人間として、公権力の介入を許し、ご迷惑をかけたことを申し訳なく思っている」
弁護人「草薙さんはこの法廷で情報源を明らかにしたが、あなたはそういう立場はとらないのか」
元編集長「はい。情報源の秘匿は、命より大切なものだ」
《続いて検察官と裁判官も尋問》
弁護人「週刊現代への記事掲載の際、監修をだれか専門家に頼んだのか」
元編集長「申し訳ないが、答えられない」
裁判長「あなたが担当していたら、こういう本になっていたか」
元編集長「編集者にはどこかでブレーキをかける責任がある。私なら、こういう結果にならない本を作れたと思っている」
《午前11時20分にいったん休廷。審理は午後1時半に再開され、被告人質問が行われた》
弁護人「鑑定人に選ばれた後、草薙さんに求められて会った理由は」
被告「広汎性発達障害に真剣に取り組んでいるジャーナリストだから。事件をめぐる報道に心を痛めていたので、長男が殺人者ではないことを世間に知ってもらいたいと思った」
弁護人「調書を見せる際に何か約束はしたか」
被告「コピーはしないことと、形を変えて掲載すること、事前に原稿をチェックさせてもらうこと」
弁護人「調書を見せることは法に触れるとは思わなかったか」
被告「何らかの法に触れるだろうとは思っていた。一方で、良心に従って行ったことは法に触れないように法律はできていると思っていたので、触れないかもしれないとも思った」
弁護人「『僕パパ』の出版を知ったのは」
被告「出版直前に『本を受け取ってほしい』と連絡があって知った。その後、会って手渡された」
弁護人「そのときどう思ったか」
被告「表紙に長男が書いた犯行計画書がそのまま使われているのを見て、唖然とした。中身も見ずに袋にしまった」
弁護人「中身を読んだのは」
被告「(逮捕後の)勾留中。私の意図に全く反する本だった」
弁護人「調書を見せたことを、今はどう考えているか」
被告「長男をなんとかしてあげたいと思って見せた。結果はこうなったが、信念については後悔していない」
弁護人「長男に言いたいことは」
被告「この本で更生に支障が出れば、私が調書を見せたことが一因なのでおわびしたい」
弁護人「長男の父親については」
被告「特別な思いはない」
弁護人「草薙さんに対しては」
被告「ジャーナリストとしての主張を、この法廷で聞きたかった。うらみは別にないが、ジャーナリストとして反省すべき点は反省してほしい」
弁護人「取り調べには『草薙さんにだまされた』と供述しているが」
被告「結果的にだまされたのはだまされた」
弁護人「講談社には」
被告「不信もあったが、元編集長の証言を聞いて、しっかりとした考えの方もいるのだとほっとした」
弁護人「最後に裁判所に言っておきたいことは」
被告「裁判所にではなく、私の患者のみなさんに、ご迷惑をかけたことを謝りたい」
《15分の休廷の後、検察側が質問》
検察官「調書を見せるのに、長男や父親の承諾は得たのか」
被告「もらっていない。ただ長男への殺人者というレッテルをはがしたかったので、長男からも同意してもらえたと思う」
《最後に3人の裁判官から補充質問が行われた》
左陪席「いっさい後悔している点はないのか」
被告「もちろんこういう結果になったのは残念。ああいう本が出てしまったことも後悔している」
右陪席「家裁から事件記録を預かったとき、取り扱いについて説明は」
被告「なかった」
裁判長「広汎性発達障害を理解してほしいなら、学会などで啓蒙(けいもう)することもできると思うが」
被告「長男に殺意がなかったことをまず伝えたかったのであって、そのためには広汎性発達障害の理解が必要だった。障害への理解を広めるために、この事件を使ったのではない」
《午後3時40分すぎに閉廷。2月24日の次回公判では検察側が論告、弁護側が最終弁論を行う》
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090127-00000602-san-soci