2009年01月26日(月) 21時48分
<国際刑事裁判所>初の公判 コンゴ民主の戦争犯罪で(毎日新聞)
【ブリュッセル福島良典】コンゴ民主共和国(旧ザイール)の紛争で子供兵士を戦闘に駆り出したとして戦争犯罪に問われた同国武装勢力の元指導者、トマス・ルバンガ被告(48)の初公判が26日、オランダ・ハーグの国際刑事裁判所(ICC)で開かれた。02年7月のICC発足以来、本格的な公判は初めて。国際協調路線を掲げるオバマ米政権の誕生で、ICC非加盟の米国の姿勢変化が注視される中、戦争犯罪や「人道に対する罪」に関与した政治・軍事指導者を裁く今後の裁判の前例となる。
アフガニスタン、イラク戦争を強行したブッシュ前政権は米兵が訴追される恐れがあるなどとして、ICCへの加盟を拒み続けてきた。オバマ大統領は就任前、「米軍司令官と協議し、ICCの実績を見て決める」と加盟を前向きに検討する考えを示しており、ルバンガ被告の公判も米国の判断に影響を与えそうだ。
ルバンガ被告はコンゴ北東部イトゥリ地区を拠点とした民兵組織「コンゴ愛国者同盟」(UPC)の元指導者。起訴事実によると、02年9月〜03年8月、15歳未満の子供を兵士として徴募し、自ら司令官を務めるUPCの武装部門「コンゴ愛国者解放戦線」(FPLC)に組み入れ、戦闘に参加させた。
26日の初公判で、ルバンガ被告は弁護人を通じて無罪を主張。ICCのモレノオカンポ主任検察官は冒頭陳述で「兵士の3割が子供だった」と指摘した。公判では当時10〜13歳だった元子供兵士や家族ら34人も証言する予定で、年内に審理終了の見通し。
モレノオカンポ主任検察官は初公判前、AFP通信に「子供兵士は殺害、強姦(ごうかん)、略奪、放火を強いられた。被告の犯罪を明らかにし、世界の子供兵士問題に歯止めをかけたい」と述べ、最長有期刑の禁固30年に近い重刑を求める考えを示した。
ルバンガ被告は06年3月にキンシャサで逮捕され、ハーグ移送後、同年8月に起訴された。人権保護団体によると、98年に始まったコンゴ紛争では3万人以上の子供が武装勢力によって戦闘に参加させられた。イトゥリ地区の部族間戦闘では、住民ら約6万人が死亡したという。
ICC発足から本格的な公判までに約6年を要した背景では、容疑者の逮捕・引き渡し、証拠提出などで関係国の協力を得る態勢が十分に整っていないなど、捜査や訴追に時間がかかる事情がある。
【ことば】国際刑事裁判所(ICC)
集団虐殺などの犯罪を犯した個人を国際社会が裁く常設法廷。90年代には国連の決議で旧ユーゴやルワンダの虐殺などを裁く特別法廷が設置されたが、国際社会の意見が割れた場合には裁判所を設置できないケースも出ることから、02年に恒常的な初の国際刑事法廷として発足した。
訴追対象は、集団虐殺▽人道に対する罪▽戦争犯罪▽侵略の罪−−と規定。最高刑は終身刑。日本など108カ国が加盟する一方、米露や中国は非加盟。現在、ウガンダ、コンゴ民主共和国(旧ザイール)、中央アフリカ、スーダンの4事例を扱う。スーダン・ダルフール地方の紛争を巡っては、08年7月、現職国家元首として初めて同国のバシル大統領の逮捕状を請求した。
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