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2009年01月26日(月) 14時50分

【神隠し公判】「同情すべき生い立ちが犯行にいたった要因」…弁護側最終弁論(2)産経新聞

 弁護人が法廷で読み上げた星島貴徳被告に対する住居侵入、わいせつ目的略取、殺人、死体損壊・遺棄事件の最終弁論要旨は以下の通り。 

 

■犯行態様


 特に注目すべきは、殺害行為には特段の執拗(しつよう)性や残虐性がないことです。もちろん、被害者の首を包丁でひと突きにすることが残虐でないなどというつもりはありません。しかし、永山判決でいう「殺害行為の残虐性」とは、「特段の残虐性」と理解すべきですが、星島貴徳被告は東城瑠理香さんを目隠しし、殺害を気付かせないようにしつつ、首をひと刺しして殺害したものです。そこには例えば、「生きたまま灯油をかけて焼き殺す」「助けを求め懇願する被害者を無慈悲に殺害する」「執拗に何度も打撃を与えて殺害する」といった被害者への死の恐怖を継続的に味わわせるような残虐性や殺害行為を繰り返すような執拗さは認められません。


■結果の重大性


 今回の被害者は1人です。もちろん、人1人の生命が地球より重いという格言を無視するつもりはありません。尊い命が失われたことについては、冥福を祈るだけですが、死刑基準にいう結果の重大性は被害者の人数で判断されていることを無視すべきではありません。


■遺族の被害感情など


 東城さんの被害感情を無視できないことは当然であり、被告ともども弁護人としても十二分に認識しています。近隣社会に与えた影響や、多くのひとり暮らしの女性に与えた多大な不安感も無視できません。


■生い立ち

 

 星島被告は幼少時に誤って熱湯の風呂に落ち、両足にケロイドを伴うやけどを残しながら今日まで生きてきました。被告は検察官調書で以下のように述べています。

 「どこに転校しても、転校先の生徒ばかりか先生までもが、私の足ばかりを見ていました。私の足を見るほかの生徒の目は、同情や哀れみの目、気持ち悪い物を見るような目、私をさげずんだように見る目、バカにするのうな目ばかりでした。人と接しなければ、自分が傷つけられることもないと思い、なるべく人と接しないようにしていました。私のやけどの痕は、大きなコンプレックスになっていました」

 「思春期になったせいもあるでしょうが、学校で交際する男女が増えれば増えるほど、自分の足のことがコンプレックスになっていた私は『足にこんなにひどいやけどの痕がある自分なんかを、誰も好きになるわけがない。女性や恋愛なんて、自分とは関係がない』と思い、両親に対する恨みを深めていったのだと思います」

 「やけどが残るこんな体で、人並みに恋愛なんかできるわけがないと最初からあきらめていました。女性との恋愛とかは自分には関係ないと思っていたので、女性を好きになること自体を拒否していました。そして、誰も好きにならないように注意していました」

 「私は、ずっと自分には女性と縁がないとあきらめていました。やけどの痕が残るこの足では、人並みに恋愛したり、結婚することは無理だとあきらめていたのです。女性を好きになり、告白したりすると、足のやけどのことがあってふられるに決まっている。自分が傷つくのが怖いという気持ちが強かったために、自分で自分の感情を縛り付けていたのです」


 身体的な欠点についての悩みは、両親すら気付かず、星島被告が物心ついてから常にこの傷痕と向き合って悩み続けてきました。小中学校の同級生からは、さげすんだ目で見られたり、バカにされたりしました。体育の授業、特に水泳の授業などには参加できず、「足にこんなひどいやけどの痕がある自分なんかを誰も好きになるわけがない」「女性や恋愛なんて足にやけどの痕がある自分とは関係ないものだ」と思い、女性を好きになること自体を拒否し続けてきました。

 このような星島被告の判断が身勝手なものだと言ってしまえば簡単ですが、身体的欠陥は他人には理解できないことがしばしばあります。だからといって、人を殺害してもよいなどというつもりはありません。同じような身体的悩みを持ちながら真面目に生きている人は多く、被告もすでに34歳であり、思慮分別の備わった成人であります。

 しかし、被告の同情すべき生い立ちが、今回の犯行にいたった1つの要因であることも否定できません。

 ただし、弁護人も被告自身も、身体的悩みがあることで、犯行が許されるとは考えていないことを付け加えます。


■前科、再犯のおそれ

 星島被告の33年余の半生では、全く前科前歴がありません。幼少時から現在まで、学校で問題を起こしたり、両親が呼び出されたこともなく、会社で懲戒処分を受けたり、叱責(しっせき)をされたことすらありませんでした。そればかりか、勤務先では仕事ぶりが評価され、新人の面倒を見たりしながら、真面目に勤務を続けていました。

 星島被告は法廷で両親への恨みを述べていますが、内心に恨みを抱えていたとしても、実行に移したことは一切ありません。

 これまでに前科前歴がなく、長年恨みを抱いていた両親に対しても何ら現実の行動には至っていません。反省の情を考えると、今後同種の事件はおろか、いかなる犯罪にも至らないであろうことを確認しています。

=弁護側最終弁論(3)に続く

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