2009年01月26日(月) 19時40分
「逃げる投資家」に「冷え込む経済」 英国に忍び寄る財政破綻の足音(MONEYzine)
「英国は終わった——」。米国の著名な投資家ジム・ロジャーズ氏が発言したこのコメントに対し、英国のブラウン首相は23日のBBCラジオでのインタビューで「英国の出方によって利益を得たい一部の投機筋のコメントに基づいて、われわれが政策を立案すると考えるのであれば、それは大きな間違いだ」と必死になって反論した。
だが英国がかつてなくきびしい状況に直面しているのは事実だ。金融危機が始まるまで、英経済は15年以上の成長を続けてきたが、世界不況の影響が深刻で住宅価格の下落率は過去最大、クリスマス商戦も過去最低を記録し、バブルがついに崩壊。たちまち失業率が上昇するなど実体経済の悪化が指摘されている。
英国の金融システムはもはや破綻寸前だ。大手銀行の1つロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)は2008年通期決算が280億ポンド(約3.4兆円)の損失と過去最大の赤字に陥る見通しを発表、株価は一週間足らずで67%も急落した。英政府は19日に40兆円にものぼる巨額の追加金融支援策や中小企業対策などを相次いで発表したが、RBSの1行だけで英国の経済規模の2倍以上の2兆ポンドの債権を持っているとみられており、英政府がもし銀行に対し無制限の保証を続ければ、英国自体が財政破綻に陥る可能性さえ出てくる。こうした事実に加え、最近になってジム・ロジャーズ氏のような著名な投資家が、「英国は終わった。持っていた英通貨ポンドはすべて売ってしまった」と発言したことで、信用収縮による景気悪化の懸念は払しょくされるどころか、一段と拡大し、20日には対円で最安値更新し、対ドルでも約6年10カ月ぶりの安値を付けることになってしまった。
金融不安がこのまま進めば、英国は銀行破綻とポンド崩壊というダブルショックの可能性も出てくる。ジム・ロジャーズ氏の発言に苛立ちを示したブラウン首相の脳裏には、英国が92年にジム・ロジャーズ氏の元パートナーであるジョージ・ソロス氏によるポンドの売り浴びせによってイングランド銀行が敗北し、ポンド危機にまで追い込まれた過去の苦い記憶が蘇っていたのかもしれない。だが今の英国を取り巻く危機は当時以上に大きなものとなっている。英国の威信をかけてこの難局を乗り越えられるのか、世界の注目が集まっている。
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