声援がどの大会よりも大きかった。25日の第72回中国山口駅伝を最後に引退する中国電力の田中俊也選手(29)が、有終の美を飾るゴールテープを切った。「十分な成績が残せなかった」と振り返る競技人生だが、チームメートは練習パートナーを務めるなど支えてくれた田中選手に厚い信頼を寄せ、レースをもり立てた。
緩やかな下りが続く7区11.1キロ。出だしは「体が思うように動かず、焦っていた」と田中選手。1キロ過ぎ、妻夏紀さん(29)と長男雅久ちゃん(3)、長女芭奈ちゃん(1)の姿が沿道に見えた。「最後の応援。目に焼き付けた」。淡々と距離を刻み逃げ切った。
坂口泰監督は「このレースを見れば、彼がどんな競技生活を送ってきたか分かる」。みんなに胴上げされ、顔をくしゃくしゃにした「卒業生」に、ねぎらいの握手を求めた。
【写真説明】チームメートに胴上げされ、笑顔を見せる中国電力の田中選手(撮影・浜岡学)