将棋の矢内理絵子女流名人(女王、29)と挑戦者・清水市代女流王将(40)の5番勝負第1局が25日、富山・黒部市の宇奈月国際会館「セレネ」で行われ、後手の矢内が196手で先勝した。両者押して押されて力と力がぶつかりあった大激戦は、約8時間にも及んだ。第2局は2月1日、千葉・野田市の関根名人記念館で行われる。
勝者である矢内のかすれた声が、激戦を物語っていた。「1回も自分の良い局面がなかったように思う。最後の最後まで分からない勝負でした。寄せが見えてこなかったし、本当によく分かりませんでした」ようやく声を絞り出し、対局を振り返った。
序盤から清水に馬を作られつつも、じわじわと相手の玉に忍びよる力と力のぶつかりあい。控室の優位予想も、一転二転を超えて予測不可能なシーソーゲームに。「限界を超えた戦い」と田中寅彦9段は口にした。128手目△7四銀で勝ち筋が見えてきたが、最後は「気力勝ち」といえるかもしれない。
精神的な充実—。今期はマイナビ女子に勝ち、自身初の2冠を達成、これが大きな自信につながっている。女流棋士の第一人者としての自覚も年々増してきた。同じ勝負事として今注目しているのは大相撲初場所。まるで自分が相撲をとっているかのように興奮し、体が左右に動くほど感情移入してテレビ観戦しているという。あいにく朝青龍の復活Vの瞬間は対局中でナマでは見られなかったが、常に外に目を向けて、視野を広げることを忘れない。
4連覇に向けて幸先の良いスタート。「2局目は良い内容の将棋を指せるように対策を練りたいと思います」と勝利の余韻に浸ることなく、次戦へ向けて気持ちを引き締めた。
舞台となった宇奈月国際会館「セレネ」には美術館もあり、平山郁夫氏始め7人の日本画家が描く黒部渓谷の大自然をテーマにした作品の数々が展示されている。女流としては初の“美術館開催”となったこの日の名勝負は、絵画のように美しく、また見る者の心に響く熱い一戦となった。
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