2009年01月25日(日) 13時00分
スターバックス失墜の理由 ブランド戦略で矛盾が生じ「コンビニ化」(MONEYzine)
1971年にシアトルで開業した当時は、ありふれたコーヒー焙煎の会社だったスターバックス。それから数十年でコーヒーチェーンとして劇的な成長を遂げたのは周知の通りだ。21世紀に入るとプレミアムコーヒーのトップブランドとしての地位を確立し、世界40ヶ国超に1万5000店以上出店するなど急拡大してきた。日本には96年に進出すると店内を全面禁煙にした経営スタイルが話題を呼び、女性層を中心に評価され、国内のカフェブームの火付け役となった。店舗も2009年3月期で816店まで増えている。
急成長を続けてきたスターバックスだが、しかし近年ではその成長に陰りが見えはじめている。米スターバックスが昨年11月に発表した7-9月期(08年9月期の第4四半期)決算は97%の減益と急ブレーキ。同社は海外出店計画を縮小する方針としたほか、09年9月期の業績についても悲観的な見通しを示している。また日本で上場しているスターバックス コーヒー ジャパンも店舗増で売上こそ増えているものの08年9月中間期の決算(非連結)は純利益が前年同期比26%減の15億円とさえない。
成長停滞の原因は景気低迷や原材料価格の高騰によるコスト増、ライバル店の存在などがあげられるが、経済専門家などから最も深刻視されているのが「ブランド力の低下」だ。同社はシアトルから生まれたおしゃれなプレミアムコーヒーショップとして登場し、安物のコーヒーが定番で時間潰しにしか使われなかった従来のコーヒーチェーンのイメージとは一線を画したマーケティングでファンを獲得してきた。日本進出の際に創業者のハワード・シュルツ氏が「人々はスターバックスのブランドに魅了されている」と話したようにその強いブランド力こそが同社の成長の原動力だった。
しかし拡大するにつれ、そのブランド戦略に矛盾を抱えるようになったのも事実だ。日本第1号店を東京の銀座にオープンさせたようにかつては都心の特に流行の中心地に絞って出店していたのに対し、近年では地方のショッピングモールにも次々と出店し、ついには消費者に飽きられてしまったという感が否めない。発祥地シアトルにおいてはコンビニのようにいたるところにスターバックスが乱立しており、すでに飽和状態だ。
なぜこれほど猛烈に出店攻勢を行ったのか。ひとつにはタリーズコーヒーやドトールが展開するエクセルシオールなどのライバル店の追い上げをかわし、シェアを広げるためだ。またいたる場所でスターバックスの看板を見かけることは消費者へ対しブランドを刷り込ませることにも貢献した。しかしそれ以上に出店を加速させた理由は上場していることで拡大経営を常に迫られていたからだとみられる。短期的な利益を追求し、新事業への投資を要求する株主を意識するあまり、必要以上に出店してしまったのだ。
競合他社の追随を許さない出店攻勢によってシェアを広げることには成功したが、店舗数が増えれば増えるほどブランド力の低下を招いてしまうという矛盾に苦しむスターバックス。現在は経営不振の影響もあって出店ペースは下がっており、これを機にスタッフの再教育やファン向けのイベントを開催するなどサービスの質を上げる努力もしているが、本格的な回復にはしばらく時間がかかりそうだ。
【関連記事】
・
苦境にあえぐNo.1ブランドコーヒーチェーン スターバックスの失望
・
アイス、ドーナツ・・・外資系飲食チェーンが国内で躍進 行列店に共通する人気要素とは
・
奮闘していた低価格衣料品業界に異変 西松屋、しまむらが苦境に陥りユニクロが独走
・
社員も株主も「寝耳に水」の黒字倒産 危険な会社の見分け方
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090125-00000000-sh_mon-bus_all