2009年01月24日(土) 13時00分
「ビッグスリー」対「日本自動車メーカー」 環境技術が次の100年の覇権争いの焦点に(MONEYzine)
「燃料効率で世界をリードする—」。今月11日に開幕した北米国際自動車ショーでゼネラル・モーターズ(GM)のワゴナー会長はこの言葉を繰り返し強調した。
かつて繁栄を謳歌したビッグスリー(米3大自動車メーカー)は経営危機に陥っており、昨年末に政府によるつなぎ融資が決まったことでかろうじて破綻を免れたもののGMなどはさらなる追加融資が必要な状況だ。ビッグスリーが経営不振に陥った理由としては経営効率の低下や金融危機による消費不振などがあげられるが、燃費の良い小型車やハイブリッド車などの環境技術の開発を怠り、トヨタ自動車やホンダなど日本メーカーに遅れをとったことも売上低迷の原因となった。
20日に米国の第44代大統領に就任したバラク・オバマ氏が力を入れて着手する改革のひとつが環境分野。現在世界が直面している金融危機・温暖化・石油価格高騰に対し、環境分野に重点的に投資を行い、経済再建や雇用の創出を行う。クルマ社会である米国ではとくに電気自動車などクリーン(グリーン)エネルギー関連への取り組みが注目されている。
オバマ氏は大統領就任が決まった昨年末からビッグスリーに対する環境対応車投資向けの低利融資枠の倍増案を支持してきた経緯があるが、ビッグスリーには追加支援と引き換えに環境に優しい電気自動車などの普及を要求するとみられている。これを受けてビッグスリーも北米自動車ショーでは出展したコンセプトカーの大半を電気自動車やハイブリッド車で占め、次世代エコカーを機軸として再起する姿勢をアピールしている。
GMのワゴナー会長が強調して語った「燃料効率で世界をリードする」という言葉を環境技術で先行するトヨタやホンダはどう受け取ったのか。トヨタは昨年に新車販売台数が897万台に達し、GMの835万台を上回り創業から70年強で世界首位の座を獲得した。しかし足元は09年3月期に戦後初の営業赤字を見込むなど90年代の平成バブル景気の崩壊やその後10年にわたって続いたデフレ不況時にも経験したことのない苦境に陥っている。未曾有の危機に対応するため創業家出身の豊田章男副社長が新社長に就任し、業績回復へ向け改革を急ぐとともに、環境技術をさらに強化し、2020年までにハイブリッド車を全車種に展開する方針だ。
ホンダも負けてはいない。同社は2月にハイブリッド車「インサイト」を190万円以下で発売する予定で、これまで排気量に対し割高だったハイブリッド車の価格を劇的に下げることで現在3%程度にとどまっているハイブリッド車市場そのものを拡大させる意気込みだ。その他にも年内に三菱自動車と富士重工業が軽自動車ベースの電気自動車を市販する予定で日本メーカーによる環境対応自動車の開発は、構想の段階から大量生産への実現に動きが加速している。
自動車産業の時代だった20世紀はとうに過ぎ去った。21世紀も自動車産業が消費者に受け入れられていくには何が必要なのか。次の100年を生き抜くために日米の両メーカーは試行錯誤を行いながらしのぎを削っていく。
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