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2009年01月23日(金) 08時23分

運転過失致死事件の遺族、初の公判参加…きょう東京地裁で読売新聞

 東京地裁で23日に開かれる自動車運転過失致死事件の公判で、「被害者参加制度」に基づき、被害者側による被告人質問などが行われる。

 最高裁などによると、同制度で被害者側が実際に参加するのは全国で初めて。同地裁では同日の別の傷害事件の公判でも被害者参加が決まっている。自動車運転過失致死事件で法廷に立つ被害者の妻は、「遺族のつらい思いを訴え、被告に実刑を求めたい」と話している。

 東京・千代田区の交差点で昨年8月、オートバイを運転していた男性(当時34歳)が、トラックにはねられ死亡した。23日に開かれるのは、自動車運転過失致死罪に問われたトラック運転手の初公判だ。

 男性の妻(34)が、友人を通じて知り合った男性と結婚したのは2002年1月。その2年後の04年1月、待望の長女(5)を授かった。一人娘を誰よりもかわいがり、週1回の休みの日には必ず外に遊びに連れて行ってくれる優しい父親でもあった。

 毎年大みそかには、年越しそばを作ってくれた。日付が変わるころ、近くの神社に家族3人で参拝した。妻は、交通安全のお守りを買って、オートバイで通勤する夫に託していた。

 しかし、夫は昨年8月1日未明、皇居前広場の交差点で、近くの勤務先からオートバイで帰宅途中、右折してきたトラックにはねられた。駆けつけた病院で、長女は「遊園地に連れて行ってくれる約束だったのに」と泣き叫び、妻は、夫の死を告げようとする医師を「聞きたくありません」とさえぎった。

 大黒柱を失った家族の生活は一変した。自然と涙があふれてしまう妻を気遣い、長女は自分の胸に手を当てながら「パパは心の中にいるよ」と励ましてくれる。その長女も夜寝る前に、父の遺骨のそばで突然、「パパに会いたい」と泣くことがあるという。

 自動車運転過失致死罪の法定刑は懲役7年以下。初犯の場合、ほとんどのケースで執行猶予が付く。

 「過失が原因とされる交通死亡事故の刑は、遺族にとって軽いと思う。世の中に訴えていかなければ、現状は変わらないと思ったから」。妻は、公判に参加しようと思った理由をそう説明する。「被告に反省してほしい」との思いを込めながら、夫の兄(35)とともに法廷に立つつもりだ。

 ◆被害者参加制度=殺人や傷害、業務上過失致死傷などの刑事裁判で、被害者や遺族が希望し、裁判所が認めれば、被告に質問したり、求刑の意見を述べたりすることができるようになった。制度導入には、「被告が言いたいことを言えなくなる」との慎重論もあったが、被害者・遺族の声に応える形で実現した。昨年12月1日以降に起訴された事件に適用されている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090123-00000010-yom-soci