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2009年01月23日(金) 22時52分

<被害者参加>遺族「思い言えた」 東京地裁公判毎日新聞

 これまでの法廷模様を大きく変える「被害者参加制度」が動き始めた。東京地裁で23日に開かれた2件の公判。法廷の柵の内側に「被害者参加人」として初めて座り、被告に直接質問した遺族や被害者は「思っていることを言えた」と語る一方、被告の態度に怒りを募らせる場面もあった。被害者団体の受け止め方もさまざまだった。【北村和巳、伊藤一郎、銭場裕司】

 午後2時半から開かれた自動車運転過失致死事件の公判には、トラックにはねられ死亡した男性(当時34歳)の兄(35)と妻(34)が参加。被告のトラック運転手(66)は起訴内容を認めた後、妻と兄に頭を下げた。弁護人と検察官が被告に質問後、兄が質問に立った。

 兄「なぜ1回しか謝罪に来なかったのか」

 被告「気持ちの整理ができていないと断られると思った」

 検察側が禁固1年6月を求刑後、妻が涙ながらに意見を述べた。

 妻「あなたのように誠意のない人に主人の命を奪われ悔しい。遺族は一生、寂しくつらい生活を送る。刑務所で罪を償ってほしい。実刑を強く望みます。罪が軽ければ交通死亡事故はなくならない。私たちの思いを反映してほしい」

 裁判長「最後に言いたいことはありますか」

 被告「別にございません」

 妻はハンカチで涙をぬぐった。

 閉廷後に会見した兄は「私たちが怒りを言わなければ、裁判所は知らずに終わる。被告の態度を見て疲れたが、感情や訴えを伝えられ、やって良かったと思う」。被告人質問では感情の高ぶりを必死に抑えたという。

 妻は「緊張や不安はあったが、思いは十分言えた」と話す一方、「被告の返答や態度に反省の色が感じられなかった。悔しいです」と涙ぐんだ。被害者側の元橋一郎弁護士は「被害者が参加することで丁寧な審理が行われた」と評価した。

    ◇

 午後1時半に始まった傷害事件の公判では、起訴内容を認めた2人の被告に対し、被害男性(52)が自ら質問した。男性は、東京・新宿の路上を歩いていた際に被告から暴行され、金を要求されたとされる。

 男性「一生懸命働いて稼いだお金を人から奪うことをどう思うか」

 被告「ひきょうな感じ。とんでもないことをしました」

 男性「厳しい判断をお願いするが、罪が重くなったらどう思うか」

 被告「被害者が怖い思いをしていますし、納得がいく」

 男性は終始、優しく語りかけるように質問。閉廷すると、両被告ともに男性に深々とお辞儀して退廷した。

 閉廷後、被告の弁護人は「被告らが被害者と向き合うことで、反省を深めてくれることを期待する」と話した。

 ◇賛否分かれた被害者団体

 自動車運転過失致死事件を傍聴した被害者団体の代表2人は、異なる感想を述べた。

 制度実現を強く求めてきた「全国犯罪被害者の会」(あすの会)の代表幹事、岡村勲弁護士(79)は「被害者のための裁判がやっと実現した」と感慨深げ。参加した遺族2人について「役割分担し良い質問や意見陳述をした。遺族は言いたいことを言えただけで慰めになる。裁判所は遺族の姿をちゃんと見て判断してほしい」と話した。

 制度に反対してきた「被害者と司法を考える会」代表、片山徒有さん(52)は「遺族の言葉の重さは響いたが、法廷柵の内側で天を仰ぎ、悲嘆にくれる姿が印象的だった。あまりに負担は大きい」と話した。その上で「最後まで意見をうまく伝えられない被害者は多いだろう」と訴えた。

 ◇全国で14件許可

 最高裁などによると、23日までに11地裁・同支部が14件の事件で計23人の遺族・被害者の公判参加を許可した。内訳は、自動車運転過失致死傷事件が9件で最も多く、傷害事件3件、強盗殺人事件1件、業務上過失致死傷事件1件。

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