2009年01月23日(金) 21時00分
【被害者参加制度】「あなたのように誠意ない人初めて」遺族(産経新聞)
殺人や傷害など故意に人を死傷させた罪のほか、危険運転致死罪や強姦(ごうかん)罪などの被害者や遺族が、裁判所の許可のもと刑事裁判に参加できる被害者参加制度。犯罪被害者と被告との“距離”が縮まった。裁判員裁判用の法廷で23日開かれた2件の公判に「被害者参加人」として出廷した遺族らは、量刑についての意見や被告人質問の中で、事件や被告への思いを自らぶつけた。
■「あなたのような人初めて」
自動車運転過失致死罪に問われたトラック運転手、海野尚康被告(66)の公判には死亡した男性の妻(34)と兄(35)が出廷した。検察官の隣に兄が、その後ろには付き添いの弁護人とともに妻が着席。検察官が起訴状や冒頭陳述を朗読すると、妻は起訴状などのコピーを手にしながら涙を流した。
検察官が、これまで1回しか遺族宅に訪れていないなど、被告の謝罪の姿勢について被告人質問で厳しく問いつめたが、被告ははっきりとした答えを返さない。検察官に続いて被告人質問を始めた兄が「あなたが考える誠意とは何ですか」と問いかけると、被告は「ただ謝るしかないと思います」とうつむくだけだった。
検察側の論告の後、量刑に対する意見を述べるため立ち上がった妻は被告に厳しい視線を向けた。事故後、交通事故の裁判を多く傍聴してきたといい、それらの被告に比べて「あなたのように誠意のない人は初めて」と声を詰まらせた。その上で「私たち遺族は殺人だと思っている。被告は事故を忘れてしまうが、遺族は一生寂しくて辛い生活をしなければならない」と訴えた。
最後には裁判長に、「被害者が裁判に参加して発言できることは意義がある。この思いを判決に反映していただけることを望みます」と遺族の思いを直接伝えた。
■「私を恨みますか?」
被告2人から因縁をつけられ左胸を骨折させられた50代の男性は検察官席で立ち上がり、諭すような口ぶりで、それぞれの被告に約5分間ずつ自ら質問した。
「やり直して立派な社会人として戻ってきてもらいたい。そのために、(求刑時に意見を述べて)裁判所に厳しい判断をお願いしようと考えています。私のせいで刑が重くなったら私を恨みますか」
飲食従業員の相蘇義士被告(21)は「恨みません。(路上で会っても)謝ります」。同、伊藤瞬被告(21)も「納得です。(犯罪を)やってしまっている。怖い思いは被害者しかしていない。そういう権利もあると思う」。
男性が「夜遅くまでくたくたになって、一生懸命、お金を稼ぐ人からお金を奪うことをどう思いますか」と罪の意識を問うと、相蘇被告は「卑劣」、伊藤被告は「昼の仕事はすごいと思う。自分は楽をしていた」と反省した姿勢を見せた。
公判が終了して退廷する際、相蘇被告は被害者に深々と頭を下げた。
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