準大手ゼネコン「西松建設」側が2003年以降、福島県内の原子力発電所から残土搬出事業の受注を狙って、残土の埋め立て予定地を所有する同県の建設会社に対し、ダミー会社を経由して2億数千万円を融資していたことが分かった。
しかし、事業は発注されず、融資も返済されないままになっている。この融資は外国為替及び外国貿易法違反容疑で逮捕された西松建設の国沢幹雄前社長(70)が指示しており、東京地検特捜部はダミー会社や建設会社を捜索し、不透明な資金の流れを調べている。
同社関係者によると、西松建設が受注を狙ったのは、原発施設の港内からしゅんせつされた土砂を、施設外に運び出して処理する事業。2000年から04年にかけ、東京都内の別の準大手ゼネコンが電力会社から六十数億円で受注したことがあり、西松建設は、その後の事業を受注しようとした。
残土の搬出先として同社が見込んだのが、福島県内の建設会社が所有する採石場跡地。そして、03年ごろ、この建設会社の経営を支援する目的で、2億数千万円を融資する計画が持ち上がった。報告を受けた国沢容疑者は了承し、融資の実行を指示したという。
ただ、融資にあたっては、「発注前に西松建設の名前が表に出ると、電力会社が嫌がるのではないか」との考えから、資金は西松建設の子会社「松栄不動産」が用意。さらに03年末に都内に設立した会社をダミーとして間に挟むことになった。2億数千万円の融資は数回に分けて実行されたが、融資に見合う担保はとっていなかった。
ダミーに使われた会社は都内のビルの一室にあるが、郵便受けと部屋のドアにプレートがあるだけで、部屋は西松建設の土木部門が使っている。ダミー会社の社長、前社長とも西松建設の取引先だといい、「西松幹部に頼まれて名前を貸しただけ」と証言している。
結局、西松建設が受注を期待した残土搬出事業は発注されなかった。電力会社は「04年までに残土の処分を終えた上、港湾を改修して海底に土砂がたまりにくくなり、搬出する必要がなくなった」と説明する。この結果、西松側から建設会社への融資の焦げ付きだけが残る形になった。
この融資について、福島の建設会社の社長は読売新聞の取材に、「(特捜部の)捜索を受けたのは事実だが、資金についてはノーコメント。問題のある資金ではない」と話している。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090122-OYT1T00006.htm?from=main1