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2009年01月22日(木) 17時41分

イージス艦事故、あたごに主因…海難審判スポーツ報知

 海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故で、横浜地方海難審判所(織戸孝治審判長)は22日の裁決で、事故原因についてあたごの監視不十分が主因と認定、刑事裁判の被告に当たる「指定海難関係人」5者のうち、所属部隊の第3護衛隊(京都府舞鶴市)に、安全運航の指導徹底を求める勧告を言い渡した。

 海自組織への勧告は、30人が犠牲になった1988年の潜水艦「なだしお」衝突事故の海難審判一審以来、2例目。裁決は、ずさんな運航で海の安全をないがしろにした海自の体質を厳しく批判したといえる。

 5者は第三護衛隊のほか、前艦長の船渡健1等海佐(53)、衝突前の当直責任者の後潟桂太郎三佐(36)、衝突時の当直責任者の長岩友久三佐(35)、レーダー監視を担当する戦闘指揮所(CIC)の責任者だった安宅辰人三佐(44)。個人への勧告は見送られた。

 裁決で織戸審判長は所属部隊への勧告理由を「乗組員の教育訓練に当たり、艦橋とCICの連絡態勢や見張り態勢を十分に構築していなかった」とした上で「総合的に改善する施策を整備して、実効ある取り組みを行わなければ再発防止は図れない。第3護衛隊組織全体に対して勧告するのが相当」と結論付けた。

 また、裁決は衝突時に操船責任者だった長岩三佐の見張り不十分が事故原因と認定する一方で、後潟三佐の引き継ぎミスなど、ほかの3人の行為については衝突との因果関係を否定した。

 織戸審判長は、あたご側が復元した航跡図について「合理性に欠ける」とし「急に右転した清徳丸に主因がある」としたあたご側の主張を退けた上で、清徳丸が衝突回避の協力動作をとらなかったのも一因とした。

 裁決に不服がある場合、理事官側は二審を請求できるが、指定海難関係人側はできない。

 事故は昨年2月19日に千葉県の野島崎沖で発生。清徳丸の吉清治夫さん=当時(58)=と、哲大さん=同(23)=親子が不明となった。第3管区海上保安本部(横浜)が死亡認定し、業務上過失致死容疑などで後潟、長岩の両三佐を書類送検。横浜地検が捜査を進めている。

http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20090122-OHT1T00232.htm